映画「黒衣の刺客」 ホウ・シャオシェン監督 ~映像美の世界~

 台湾のホウ・シャオシェン監督の映画「黒衣の刺客」を見て来た。
ホウ・シャオシェン監督と言えば、『悲情城市』。
それを見て感動して、自分の中では、名監督の一人になっている。
『冬冬の夏休み』とかもいいし。

 さて、「黒衣の刺客」。
舞台は唐。
そして、主人公は女刺客。
女道士から元許嫁の暗殺を命じられて、うんぬんかんぬん、という映画である。
『悲情城市』の時もそうだったが、登場人物の人間関係が良くわからない。
中国人の区別がつかないのもあるけど。
後でネットで調べてみて、呪いで殺されそうになってたのが、妾だったのには驚いた。
正妻と妾の区別がつかず、同一人物だと思っていた。
だから何で、妊娠をごまかしているのかが、さっぱりわからなかった。
とにかく、説明が少なすぎるのだ。
まあ、監督の意図があるんだろうけど。
台湾人は、理解してるのかな。
途中で、女刺客を助ける男が突然出てくるのだが、それが妻夫木だったのにも驚いた。
なんか見たことある顔だな、とは思ったのだが。
そして設定が、遣唐使でやってきた日本人って、めちゃくちゃだよ。
映画を見てる時に知ったら、あきれて見るのを止めたかもしれない。
主人公と仮面を付けた女刺客が戦う場面があるのだけど、あの女は誰なのだろう。
主人公の師匠の女道士だと推察してるんだけど、あってるのかな。

 ということで、人間関係もわからないし、ストーリーも唐突な展開が多くて、わからない。
なら、まるっきりダメかというと、そうでもない。
類まれな映像美があったから。
台湾の風景か中国の風景か知らないが、少し物寂しい風景で、とても美しい。
宮廷風の部屋で紗の引物が風になびく様など、とても美しかった。
また屋敷が、日本の寺院みたいで、美しく撮っているな、台湾にもこんな建物があるんだな、と思っていたら、本当に日本の寺院で撮影してたようだ。
それに妻夫木の妻?が、下手糞な舞楽を踊っていたし、日本趣味が出てたね。

 まあ、けど残念な作品だった。
黒澤 明を連想してしまった。
黒澤 明も日本の過去や現在を力強く捉える映画を作ってたけど、晩年は映像美に走って、訴えてくる物はなくなってしまった。
ホウ・シャオシェンもどうやら同じ道を歩いているようだ。
『悲情城市』や『恋恋風塵』で台湾の悲しさを撮っていたのに、今は映像美しか撮る物がないようだ。

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