「崖の上のポニョ」  宮崎 駿監督

 宮崎 駿監督の「崖の上のポニョ」を見に行った。ネットで予約できるのがありがたい。宮崎 駿のアニメは、『もののけ姫』、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』と段々駄目になっていて、『ハウル』はひどかったが、それでも今度は素晴らしい作品を作ってくれるのではないかという期待がある。

 学生の時、すごくいいアニメ映画をやっているぞと連れて行かれたのが、『風の谷のナウシカ』だった。とても感動したのだが、その後、同時上映していたアニメがあまりに幼稚で、『風の谷のナウシカ』で高揚した心が汚されるような気持ちがしたので、途中で映画館を抜け出した思い出がある。それ以来、宮崎 駿は忘れていたのだが、マンガの『風の谷のナウシカ』を読んで、この人は只者ではないぞと思った。マンガの『ナウシカ』は、アニメの『ナウシカ』よりずっと哲学的な作品で、人類のあるべき姿への問い掛けがあり、しかし容易にひとつの結論なぞ認めたくないという反骨心というか天邪鬼の精神が強くて、最後は、人間の考え出した賢しらな社会なぞは駄目で、人間の生命力、そしてそこから直に生まれて来るものを肯定していこうという考えが汲み取れた。勿論壮大なストーリーの展開とかキャラが面白かったのだが、作者の強い懐疑精神にこの人は信用できるなとも思った。

 さて、「ポニョ」であるが、良かった。何が良かったと言って、手書きの絵が良かった。宮崎監督が、フルデジタルのより実写に近づこうというやり方に疑問を持ち、アニメの原点、手書きの絵に戻ろうという試みだったようだ。家や森がパステルで描いたお絵かきのような絵で、味があった。アニメの原点、絵が動いていく面白さがあった。一番面白かったのは、ポニョがソースケに会いに来るため、暴風雨の中、波の上を走って、ソースケの車を追いかけていく場面だ。宮崎監督の十八番といえるのだが。このアニメは、ちっちゃな子向けのアニメだろう。見ていて、この作品は、ちっちゃな子向けアニメの古典となるかもしれないなと思った。それにしても、相変わらず、『もののけ姫』以来うまく落ちをつけることができていない。なぜ、わざわざ「ポニョ」を止めなければ、世界が崩壊するみたいなしょーもない話にするのだろう。こういうことをすると、とたんにリアリティを失うのだ。一線を越えるとでも言おうか。もともとアニメにリアリティはないのだが、それでも映像に引き込んで行くことによって、観客は、映画に付いて行く。しかし、一線を越えると駄目だ。『もののけ姫』では、シシ神が巨大化してゴジラみたいになった時、アニメは終わった。それまでは素晴らしかったのに。千と千尋の神隠し』では、千尋は、昔川で溺れかけた時、川の精であるハクに助けられたことがあると、とってつけたようにエピソードが挟まれる。なんで、急にそんな大事な話をむりやり押し込むのだと思ったものだ。今回は、破綻するまでには、行っていない。グランマンマーレの派手な顔には、違和感をおぼえるのだが。

  あと、ソースケの母、リサの声が良かった。澄んだ声で、いいなあと思いながら、どこかで聞いたことのある声だな、だれだろうと思い出そうとしたのだが、思い出せなかった。調べると、山口智子だった。唐沢と結婚して、テレビに出なくなったので気付かなかった。これだけの声を出せるのに、勿体無い。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
「関連コンテンツとスポンサーリンク」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする