「グラン・トリノ」   クリント・イーストウッド監督

クリント・イーストウッド監督の映画「グラン・トリノ」を見た09/06/20)。荒野の用心棒」とかのクールでかっこいい役者振りを見ていた頃からは想像できない監督ぶりである。昔、監督の西部劇「許されざる者」を見た。過去の西部劇とは全く異なるリアリスチックな手法で描かれていて、ある意味衝撃を受けた。この時の好印象と映画生活の満足度ランキングで一位になっていたので、見てみようと思った。
 この映画は、いい映画である。アメリカ人のメンタリティや社会がよく描かれているような気がする。しかも、筋に乗って、ユーモアを挟みながら描かれていて、自然に映画の中に引き込まれていく。主人公は、フォードの自動車工だった頑固な老人である。隣にモン族の家族が引っ越してくる。モン族とは、ミャンマーの山岳民族である。なぜ、モン族が?と思うが、それも映画の中でちゃんと説明されている。ベトナム戦争という背景があったそうだ。弱小そうなモン族でも、ギャングを作って、黒人ギャングと抗争しているのだから驚いてしまう。主人公のコワルスキーが、モン族の気弱な少年タオを男らしくしようと奮闘するところが面白い。散髪屋のおっさんとの口汚い挨拶のかわし方、この場にいない人間の悪口を言い合って、男として一人前と認めあう文化、うーん、アメリカだなあと思ってしまう。この頑固爺いは、そう簡単に人を認めない。歯に衣着せぬ物言いで、すぐ人とぶつかる。一方で朝鮮戦争で深く傷ついた心を持っている。そして、タオのことがきっかけで、大団円を迎える。男らしく決着を付ける。
 この映画は、古き良きアメリカを歌おうとしているように思えた。自信を取り戻せと。グラン・トリノは、その象徴である。燃費が悪いのがどうした、かっこいいだろう、ということだ。いろいろ問題を抱えながら、アメリカの良心は、ここにあるという映画だと思う。

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