ウィーン美術史美術館所蔵静物画の秘密展   兵庫県立美術館  09/01/10

Photo

Photo_2

ベラスケス薔薇色のドレスのマルガリータ王女

ヤン・ブリューゲルの「小作人見舞い」

 ウィーン美術史美術館所蔵静物画の秘密展を見に兵庫県立美術館に行った。ウィーン美術史美術館の絵画は2002年にも来たことがある。その時も、ベラスケスの青いドレスのマルガリータ王女が来ていた。今回は、薔薇色のドレスのマルガリータ王女である。どちらも素晴らしい。離れて見ていると、非常に精緻な絵なのだが、近づくと粗いタッチで描かれているのに驚く。そういう所は、印象派の先駆と言えるのかもしれない。見えたようにタッチを置くのではなく、離れて見た時に実際に見えるようにタッチを置く、そういうことを初めてしたのが、このベラスケスなのかもしれない。マルガリータ王女は、ベラスケスの一連の絵のおかげでとても顔が知られた王女だ。彼女の顔は、気の毒なことに、あごがしゃくれている。彼女の父親の王は、もっとあごがしゃくれていて、人間離れしている。彼女は、見事にその血を受け継いでいる。しかし、そうではあっても、ベラスケスは美しく描いている。今回の絵は、まだ幼子なので、丸顔でかわいい絵姿である。

  さて、今回は、静物画が中心となっている。静物が暗い背景に溶け込んでいるような、地味な絵が多かった。いいと言えるような絵は少なく、物足りなかったが、ヨーロッパの伝統による重厚さを感じさせた。第1章では、サルガドの絵の、手前に描かれている武具と髑髏の質感がすごかった。第2章では、ヤン・ブリューゲルの花の絵が、さすがにこの中では良かった。さて、第4章が一番の見どころだ。面白い絵が多かった。まず、ヤン・ブリューゲルの「小作人見舞い」。これが凄かった。これは、作者の父であるピーター・ブリューゲルの絵の模写に間違いあるまいと思った。こんな絵をヤン・ブリューゲルが描けるはずがない。小さな農家の台所兼食堂を描いている。手前に大釜、奥に食卓、その周りに13人もの人々がいて、それぞれの作業に従事している。色々な物が、所狭しと置かれている。そんな雑然とした状況でありながら、全体として美しい。こういう芸当ができるのは、ピーター・ブリューゲルだけだ。茶色と黒を基調とし、その中に白と赤と青が配置されている。色々な形の物が、それぞれの存在感を持ちながら描かれている。リアリズムなのに、美しい。配置と配色を考え抜いているのであろうか?そんなことが可能なのだろうか?奇跡的としかいいようがない。ピーター・ブリューゲルは、本当にすごい画家だ。これが、模写ではなく本物なら、どれほど凄いのだろう。後でカタロクを見たら、この絵は、やはり模写と推測されているようで、本物は見つかっていないそうだ。この美術館は、ピーター・ブリューゲルの絵を10点くらい有している。しかし、来日しそうな雰囲気はない。門外不出になっているのじゃないのかなあ。来ないのならしょうがない、いつか見に行ってみたいものだ。

  他では、ヘーラルト・ダウの「花に水をやる窓辺の老婦人」が気に入った。格調があり、レンブラント的照光の美しさがある。マルティーン・ディンヒルの「酒を飲む二人の男」もいい。静けさが漂う雰囲気のある絵だ。そして、アントニオ・プーガの「オレンジの花を持って笑う男」、痴呆のような男が、グロテスクとも言える笑みを浮かべて、花を持っている。ちょっと目をそらしたくなるが、どこか尊い物が感じられ、不思議な味わいがある。

  純粋な静物画は、イマイチであったが、人物も描かれている最後の方の絵は面白い絵があり、最後はベラスケスで有無を言わさず、締めるという構成で、少し物足りないが、まあまあという展覧会であった。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
「関連コンテンツとスポンサーリンク」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする