シャガール展   兵庫県立美術館  08/09/20

2640 1640_3    

「赤いサーカス」               「ヴァルヴァの肖像

 シャガール展を見に兵庫県立美術館に行った。今回は、ロシア国立トレチャコフ美術館とパリのシャガール家の協力で借用した絵ということで、若い頃からの絵が網羅されていた。青と赤と黄色の織り成すシャガール的美しい作品は少なかったような気がする。シャガールは、23歳でパリに渡るのだが、パリ時代の作品でいきなり馬が空を飛んでいるのには、笑ってしまった。その後パリから一時故郷ヴィテブスクに戻るのだが、その時代の作品が、気に入った。シャガールにしては、写実的作品で、シャガール自身は、「記録」と呼んでいるそうだ。理髪店」、水色の壁紙に、茶色の床に中央で店主の叔父さんが座ってこちらを振り返っている。渋い絵だが、ノスタルジックでいい。輪郭を色でぼやかしているため、写実的と言っても、シャガールにしてはだ。ユダヤ劇場の壁面を飾った「ユダヤ劇場への誘い」、これでシャガールは、はじけたような気がしてならない。3x8mの大作だが、できるだけ離れて見たが、統一感が得られない。全体の感じがつかめないのだ。しょうがないから、近寄って、端から見ていった。一人一人の人間を見ていると、造型が面白い。満足して、離れて見るが、よくわからない。劇場関係者を描いているそうだ。右から左に人の流れができている。全体が幾つもの色面に分割されているので、キュビズムのようでもあるのだが、わけがわからない所までいっていないので、シャガール的キュビズムとでも言えようか。シャガールは、この作品で弾けたのだが、まとまりをつけることができなかったというような感じだ。中期・晩期のコーナーで、シャガールの完成形が見られた。「振り子時計の自画像」は、赤い馬が印象的だ。「ヴァルヴァの肖像」は、赤い服と白い顔の妻ヴァルヴァが美しい。そして、「赤いサーカス」が、一番シャガール的で美しかった。全面、紅で染められた中で、黒の輪郭線で描かれた人々と点在する青や白や黄色が美しい。色彩のシャガールらしい作品だ。あと気に入ったのは、版画集「死せる魂」だ。小説の「死せる魂」を読んだことがないので、どれくらい真に迫っているのかよくわからないのが残念なのだが、登場人物のアクの強い顔がよく表現されているし、ロシアのどろどろした雰囲気がよくでているのが素晴らしい。この版画集を見て、シャガールは、物語性の強い画家だなと思った。シャガールの絵は、どれも物語なのである。挿絵で一番力が発揮されるのではないのかなとも思った。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
「関連コンテンツとスポンサーリンク」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする