ティツィアーノの「イザベッラ・デステ」 ムリーリョの「悪魔を奈落に突き落とす大天使ミカエル」
あデューラーの「青年の肖像」 ルーカス・クラナッハ(父)の「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」
ベラスケスの「皇太子フェリペ・プロスペロ」 ヤン・ブリューゲル(父)の「森の風景」
京都国立博物館でTHE ハプスブルク展を見た(10/01/09)。ハプスブルク家の栄華をたどる展覧会ということで、ウィーン美術史美術館とブダペスト国立西洋美術館の両方から選ばれた作品が来ていた。この両美術館から選ばれているということがポイントで、近年まれに見るレベルの高い絵画が多く来ており、様々な画家の名画を堪能することができる展覧会だった。超オススメである。まだ、混雑もしていない。
まず、イタリア絵画、ベルナルディーノ・ルイーニの「聖母子と聖エリサベツ、幼い洗礼者聖ヨハネ」、沈んだ表情に見られるくらい抑制が利いているが、美しい。ロレンツォ・ロットの「聖母子と聖カタリナ、聖トマス」、明るい色彩が調和している、通俗になる一歩手前で止められているのがいい。ティツィアーノの「イザベッラ・デステ」、これが図抜けて美しい。ティツィアーノの名品中の名品じゃないかなあ。芸術家のパトロンであった若い婦人の肖像である。ちょっと緊張した固い表情が見受けられるが、凛とした美しさがある。見とれてしまった。パリス・ボルドーネの「寓意:マルス、ヴィーナス、ヴィクトリア、キューピッド」、度派手であるが、少しグレコ風で、木の葉などは、少し表現主義的な感じさえする。ティントレットの「キリストの笞打ち」、独特の人物配置により、絵に流動感がある。不思議な感じがする。バッティステッロ「オリーヴ山のキリスト」、キリストは天使に死を宣告されて絶望している男のようである。
スペイン絵画、ムリーリョの「悪魔を奈落に突き落とす大天使ミカエル」、これが素晴らしい。ムリーリョの中でも傑作では。画面一杯に描かれたミカエルは、若々しいエネルギーに満ち溢れている。決して強くは描かれていない。体に密着した肌着がとても繊細である。ベラスケスの「白衣の王女マルガリータ・テレサ」、毎年のように違うマルガリータを見ているような気がする。相変わらず、美しい。ベラスケスの「皇太子フェリペ・プロスペロ」、男の子だけれど、抜群にかわいい。マルガリータよりかわいいくらいだ。暗い室内背景から白い姿が浮かび上がって、印象的である。
ドイツ絵画、デューラーの「青年の肖像」、これは凄い絵である。まず、赤いバックに驚く。近代なら珍しくもないが、16世紀初頭にこれをやるとは、驚きである。そして、青年の表情、青年の向上心、複雑な心がそのまま表現されている。特徴を捉えて描いているのではなく、捉えどころのない物を、そのまま捉えどころのないように描いている。そこが凄い。底知れない凄さを感じる。若々しく、美しい「若いヴェネツィア女性の肖像」も霞んでしまい、個性的な顔の、「ヨハンネス・クレーベルガーの肖像」もあざとく感じるほどである。ルーカス・クラナッハ(父)の「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」、冷徹な美しさがある。
フランドル・オランダ絵画、ヤン・ブリューゲル(父)の「森の風景」、木と葉のクローズアップが美しい。アンソニー・ヴァン・ダイクの肖像画の数々、どれも美しいが、どれも黒服と黒いバックで、単調である。ライスダール「渡し舟のある川の風景」、空の広がりがスカッとする風景画である。レンブラントの「読書する画家の息子ティトゥス・ファン・レイン」、 レンブラントらしいぼかしが美しい。