「フィラデルフィア美術館展」  京都市美術館  07/07/16

 フィラデルフィア美術館展の所蔵作品より、印象派を含む19-20世紀絵画の有名どころを持ってきた展覧会である。如何にも名作ばがり出品しているような売りであるが、一流画家の二流作品を持ってきたという感じである。フィラデルフィア美術館展がアメリカの美術館の限界からこの程度の絵しか持ってないのか、この程度の絵しか持ってこなかったのか、どちらかはわからないが、この程度かという感じである。
 それでも、良かった作品について語っていきたいと思う。コロー、クールベ、ブーダン、マネと錚錚たる画家のイマイチな絵が続いた後、薄暗い室内に小さなランプが灯る絵があった。壁に寄りかかる男が妙に存在感があるのと、壁紙が暗い中美しく、それほどいい絵ではないが、うまい絵だなあと感心しながら作者を見るとドガであった。さすがドガである。けれどもドガで真に良かったのは、「小さな踊り子」の彫刻であった。少女のバレイに打ち込むことにより生まれたであろう凛とした品と可憐さが感じられる素晴らしい彫刻であった。ぐるっと回って四方から見たが、どこから見ても素晴らしかった。隣にロダンの彫刻もあったが、ドガの方が良かった。ドガは晩年眼を悪くして、彫刻に打ち込むことになるが、このデッサンの魔術師の物を捉える力は、彫刻においても如何なく発揮されている。さすがドガと言いたくなる。
 ピサロもイマイチ、モネもイマイチの後、ルノワールの絵が4点あった。ルノワールらしいかわいい女の子の絵の隣に、白いブラウスの女性の絵があった。絵から離れて立ち、白のバックの中の印象派らしい様々な色合いや白のブラウスの中の彩りを楽しみながら、田舎娘のような顔をしているなあと思って見ていた。ちょっと近づいて見てみると、眼がキラキラと生き生きとしていて、頬を紅く染め、実に幸せそうなのである。解説を見ると、ルノワール夫人の子供を生んだ後ぐらいの絵であると書いてあった。なるほどなあと納得した。
 ゴッホもイマイチ、ゴーギャンはまあまあ、そしてセザンヌ。セザンヌとしてはイマイチであるが、さすがにセザンヌは良い。ルソーの密林の絵はなかなか良かった。マティス、シャガール、ルオー、ユトリロ、キリコとイマイチがこれでもかと続く。さて、ルネ・マグリットの「六大元素」という絵があった。6分割した窓枠みたいなのの中に空、土、水、火の四大元素と女性の裸体とあと何か忘れたが計六つ描かれたふざけた絵だ。六大元素とたいそうな題に騙されて真面目に深い意味なぞ考えたら馬鹿をみる。けれども不思議に見ていると惹きつけられるのである。絵として惹きつけられるのである。なぜだろうとじっと見つめ続けたがわからなかった。ルネ・マグリットは頭だけで描いているのではなさそうだ。
 アンドリュー・ワイエスの「競売」、実にアメリカらしい侘しさを感じさせる地方の風景の絵で、本物である。さて、この展覧会で一番良かったのは、ジョージア・オキーフの「ピンクの地の上の2本のカラ・リリー」である。白いユリの花弁が二つクローズアップで描かれている。ピンクのバックと黄色いめしべが鮮やかである。この絵には驚きがある。こういう風には、普通、ユリを見れない。このユリには、生生しい美しさがある。こういう絵を見ると、画家の視る力に感心する。
 写真はジョージア・オキーフの「ピンクの地の上の2本のカラ・リリー」

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