「山種コレクション名品選」  山種美術館 07/05/26

良い日本画を蒐集しているので有名な山種美術館に初めて行った。東京国立近代美術館の靉光展を見た後、お濠沿いの道、千鳥が淵沿いの道を歩いた。いい天気で、新緑が気持ち良かった。外人混じりのどこかの団体が、イギリス大使館の方へぞろぞろ歩いていて、少しうざかった。千鳥が淵の交差点から少し坂を上ると、美術館に着いた。美術館はビルの一階にあり、展覧会場が小さな3部屋のみで、とてもこじんまりしていたのでびっくりした。しかし、ならんでいる絵は、いい絵ばかりでさすがである。まず、横山操の《越路十景》、近代的な味わいの水墨画で、“蒲原落雁”と“親不知夜雨”がなかんずく良かった。東山魁夷の《年暮る》は、青の色調で整えられた京の町並みの雪景色で、魁夷らしい心地よい絵である。村上華岳の《裸婦図》、背景といいモナ・リザを少し連想させる。観音と重ね合わせているのかもしれないが、この細い眼はなんだろう。恨みが籠っているのか、いずれにしてもいい感じはしない。体の優美なラインの美しさと背景の泉と森との調和がこの絵を美しいものにしている。竹内栖の《班猫》、美しいといえばそうだが、いうほどでもないような気がする。深みがない。酒井抱一の《秋草鶉図》、江戸琳派の装飾的美しさを追い求め、美しい絵も描くが、力のない絵も描く画家というイメージだったが、姫路藩主酒井家の次男という説明書きを読んで、ますます悪いイメージを持ったが、この絵は実にいい絵である。気づくと、月が黒いのに驚くが、絵的には、黒いのがアクセントとなっていて、黒であるべきだという気がしてくる。下村観山の《老松白藤》、生でみると松が実に堂々としていて、安土桃山、江戸の頃の松に負けていないのじゃあないかなあ、それに松の枝に絡む藤が美しく、観山は大観や春草より上だなあと思った。速水御舟の《名樹散椿》、ぱっと見それほど良くないなあと思ったが、じっと見ているといい絵である。それより速水御舟で感心したのは、写生画巻の牡丹である。写生の牡丹に薄桃の色づけをしているだけのシンプルな絵であるが、実に美しく、見とれてしまった。大作ではなく、こういうシンプルな作品が美しいのは、本物の画家である。山口華揚の《木精》、個人的にはこの絵が一番気に入った。大木の苔むした根が入り組みながら、地面に根付いている。入り組んでいるが、異様ではない。形も色合いも美しい。少し神秘的な美しさである。ふくろうが一羽根に止まっている。これが、メルヘンチックな印象を与えてしまうのが失敗とも思えるし、アクセントとしていい味を出しているとも思え、迷うところであるが、やはり実にいい絵である。好きな山登りで木々を見てきた自分としては、美しい木であると思う。ブナであろうか。

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