NHK「神の数式」について。  ~南部陽一郎さんを偲んで?~

 再放送を録画して後に見た、NHKの「神の数式」がとても面白かったので、その感想を記事に書いておきたいと思っていた。
 「神の数式」は、すべての物理現象をたった一つの数式で表現したいと願った物理学者達の苦闘の歴史とその中身をできるだけわかりやすく紹介してくれる、とんでもなく優れた番組である。
昨日、南部陽一郎さんが亡くなり、南部さんが関わる部分を記事に書いた。

 今回は、番組の要旨をまとめておこうと思う。
そのためにわざわざ、もう一度録画を見直した。
それほど興味深かったのだ。

 最初に登場するのは、ディラック。
対称性という美しさにこだわり、ローレンツ対称性を持ちこんだ結果導かれたディラック方程式は、4種類の素粒子の性質を説明するのに成功した。

次は、素粒子に働く3つの力の中の電磁気力。
電磁気力にもゲージ対称性を導入すると、うまく説明できるようになった。

しかし、電子のエネルギーが無限大になってしまうという大問題が見つかって来た。
そこに朝永振一郎のくりこみ理論が登場。
無限大の問題は、すべて質量の中にくりこむことに成功した。

次は、強い核力と弱い核力。
とても似た陽子と中性子の間に対称性を導入するという非可換ゲージ対称性を導入することによって、この2つの力を式で表現することに成功した。

ところが、ここで、力を伝える粒子の質量がゼロという大問題が発生した。
さらに、右巻きと左巻きが区別され、対称性を持つというカイラル対称性が考えられ、これでは、すべての粒子の質量がゼロになるということが導かれた。

この大問題を解決したのが、南部陽一郎の「自発的対称性の破れ」という理論である。
「対称性」という概念により成功してきた物理学に、「対称性は破れる」という革命的な考え方を導入して、重さを説明するのに成功する。

 クォークとその反粒子のペアが生まれては結合して消えている。それには、右巻きと左巻きのペアがある。
ところが、「自発的対称性の破れ」により、右巻きの粒子と左巻きの反粒子のペアが結びついて、消えずに残り、空間中に沈殿しているというのである。
その空間に粒子が光の速さで飛んでくると、粒子は空間中に沈殿している右巻きの粒子と左巻きの反粒子のペアとぶつかり入れ替わりながら、進んでいく。
その動きにくさが、重さだと言うのである。
真空中は、何もないのではなく、粒子と反粒子のペアで埋め尽くされているというのである。
これは、革命的すぎる考え方である。
質量と真空の概念を変えたのである。
これは、超弩級の発見だ。
大体、現在こんな考え方になってるとは、この番組を見るまで知らなかった。
これは、強い核力の場での理論であった。

 しかし、弱い核力の場では、説明できなかった。
ここで、ワインバーグが、南部の「自発的対称性の破れ」を応用して、弱い核力の場では、真空はヒッグス粒子という粒子で満たされており、そこを進む電子やニュートリノを動きにくくすることによって、質量が発生する、という理論を考えた。
全く都合のよい粒子だと思われたヒッグス粒子だが、その存在が実験で確認されたのだ。

これで、4種類の素粒子と3つの力を一つの方程式で表す標準理論が完成された。
ここで番組の第2回が終了。

 第3回から、宇宙の謎の解明に移る。
アインシュタインの一般相対性理論が多くの説明を成し遂げたのだが、ブラックホールの底(宇宙の始まりと等価)を説明することはできなかった。
その後、物理学は、上記の素粒子の数式と重力を説明するアインシュタインの一般相対性理論の式を統合させる方向に進む。
そこでも数式に無数に無限大が現れるという問題が発生した。
それは、式の分母に距離rが存在するからで、粒子がぶつかると、距離rがゼロになるからだ。
粒子を点で表現しているからだ、ということがわかった。
そこで、粒子は点ではなく、輪ゴムのようなひもだという「弦理論」を導入すると、数式から無限大が消えた。これを「超弦理論」と名付けた。
ちなみに、この「超弦理論」の大本となった、素粒子は「ひも」の性質を持つという考え方を提唱したのが、南部さん。

しかし、超弦理論にも問題があった。
重力を伝える粒子の重さがゼロにならないのだ。
しかし、次元を4次元でなく、10次元だとすると、重力を伝える粒子の重さがゼロになる。
この異次元の世界は、超ミクロの世界に潜んでいるそうである。
また、超弦理論の数式を細かく分解して計算すると、素粒子の数式と一般相対性理論の数式が導かれたのである。
これも驚愕の話。 どういうことだろう。
TVでは、よくわからなかった。
全く別の発想から生まれている超弦理論の数式から本当に素粒子の数式と一般相対性理論の数式が導かれたのだろうか。
それとも、超弦理論の数式は、元々ある程度素粒子の数式と一般相対性理論の数式を含んでいたのか。
全く別の発想から生まれた超弦理論の数式から導けたのなら、なんという奇跡という感じだけどね。
兎に角、これにより、超弦理論が素粒子の数式と一般相対性理論の式を内包する「神の数式」に近づいた。

 ここで、ホーキングがブラックホールの奥底では熱が発生している、奥底では粒子が動けないのにと言いだす。
しかし、その謎も解かれる。
粒子である弦が集まり膜になって動いている。
10次元の世界では膜だが、ブラックホールの奥底では、4次元に折りたたまれて、1点になっているというのだ。
膜は異次元にからみつき、膜は動いており、弦も動いている。
それにより熱が発生する。
そして計算した熱量が、ホーキングの言う熱量と一致したのである。
凝縮したブラックホールの奥底では、粒子は身動きがとれないと考えられていたが、異次元の世界で動き回っていたと解釈されたのである。

 凄い話である。
ブラックホールの奥底では、10次元の世界になっているというのだから。
それも、数式で予言されるとても不可解な世界が、実は正しいという驚き。

 現在、「M理論」が「神の数式」に最も近いそうである。
その「M理論」では、世界は11次元であり、10^500個の宇宙が生まれては消滅しているそうである。

素人で、自分で理解した範囲で書いたので、間違ってても勘弁してくださいよ。

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