「川の底からこんにちは」   石井裕也 監督

梅田スカイビルの梅田ガーデンシネマで「川の底からこんにちは」を見た。
初日だからかもしれないが、割と席が埋まっていた。映画生活のサイトでわりと人気になっていたので、見てみようかと思った。ここのサイトの人気と自分の好みは、相性がいいようだ。アカデミー賞を受賞する前に「おくりびと」が一位になっていたので見たし、「グラン・トリノ」もなかなか良かった。「今度は愛妻家」に続き本作で4つ目である。
 ダメダメな人間たちが、登場してきて、その振る舞いがマンガチックで面白いのだが、特に主役の満島ひかり扮する佐和子のおおげさなダメっぷりが笑える。自分を卑下しすぎていて、しょうがないんじゃないですか、を連発する。そのあきらめっぷりと自分のなさには、あきれてしまう。父の病気で田舎に帰るが、父の営むしじみ加工工場のおばさん連中に、過去の駆け落ちでぼろかすに言われ、ダメな恋人も取られて、逆ギレしてからが面白い。おばさん連中を前に、駆け落ちして男に捨てられ何が悪いの、4人の男にも捨てられたのよ、私なんて大したことないわよ、中の下よ、とぶちかます。下の上にならずに、中の下にとどまっている所が面白い。そこは、やっぱり譲れないんだなと。逆ギレ演説を終えて、そのまま出ていくかと思ったら、どうも豪そうなことを言いました、と謝るところが、どこまでも自虐的で面白い。一番笑えたのは、木村水産の社歌である。そして、笑いをぞんぶんにまぶしながら、今の世相と親子というものを描きたかったのかなあ、と思う。振り返ると、前半が冗長な気がするし、『無能の人』を薄めたような感もあるが、せりふが面白いという所が、この監督の最大の美点のように感じた。

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