『躍動する魂のきらめき―日本の表現主義』展     兵庫県立美術館

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萬鉄五郎の「風船をもつ女」

 『躍動する魂のきらめき日本の表現主義』展を見に兵庫県立美術館に行った(09/07/04)。表現主義の絵は、面白い。ちょっと物足りなかったが、まあ良かった。
 序章では、黒田清輝の「大磯鴫立庵」に驚いた。写実的な外光派だと思っていたが、この絵では、家の前に置かれている石が陽光を強く浴びている様を表現するのに、石が赤い太い線で縁取られているのだ。まさに表現主義的表現で、この時代にそれをしているのに驚いた。それに、黒田清輝は、保守的人間だと思っていたので。
 第一章では、山脇信徳の絵が気に入った。厚塗りの絵で、何かを醸し出してくるのがいい。「疎林」が、良かった。この画家は、郷里の高知で教師になったらしいのだが、もったいないことだ。そして、河野通勢の絵3点、NHKの日曜美術館で見た北方ルネッサンス風の川沿いの木々の絵にいたく感心したことがあるのだが、今回の絵は、その片鱗を感じさせる絵であった。「裾花川風景」、溢れんばかりの緑の中に陰影がある。TVで見た作品ほどの傑作ではないが、いい。「風景」、離れて見ると大したことないが、近くで見ると、コロー風で、丘の小道の人の点景が、ノスタルジーを掻き立てる。「自画像」、写実的だが、顔の周辺の紅の縁取りがパッションを感じさせる。そして、村山 槐多の絵3点、「差木地村ポンプ庫」、美しい絵である。山を背後に、白茶の小屋が立っている。気持ちが動く。見る人間の感情を奏でる色使いを知っているかのようだ。関根正二の「少年」、角ばった顔の輪郭と淡い色彩、相反する物がうまく融合しているような、そうでないような。不思議な魅力がある。
 第二章では、萬鉄五郎が目立つ。「雲のある自画像」、刑務所の中にいるような男が暗澹たる表情で立っている。陰気な絵だなで終わるところが、その男の頭の上に雲があるから、なんだ?ということになる。風景画も変わった絵だが、どこか惹かれる所がある。普門暁、鋭い線が印象的だ。そして、玉村方久斗の絵2点、玉村方久斗は、08年の京都国立近代美術館の玉村方久斗展でまとめて見て、いい絵を描くなあと感心したことがあるのだが、今回の絵も良かった。水けぶる急流の水墨、雰囲気が出ている。青の山並みの絵も美しい。

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