ギュスターヴ・モローの「レダ」
芸術都市パリの100年展を見に京都市美術館に行った。19-20世紀のパリで描かれた絵や彫刻がパリにたくさんある美術館から集められた展覧会である。まあー、一流どころの画家は、二流品ばかりであった。これほど低レベルなのも珍しい。なめられたものだ。けれどもいい絵はあったので、それについて語ろう。
モーリス・ドニの男の子の肖像、少し異様な印象を与えるが、いい味が出ていた。リッセルベルグの「アリス・セットの肖像」、これが良かった。青いドレスの女性が、鏡と金のテーブルの前に立っている。この姿が、写実的な点描で描かれている。それにより、少し幻想的な味わいが出ている。こういう絵は、初めて見た。スーラの点描は写実ではない。どこか牧歌的な世界を作り上げているのだが、写実的な点描をすると、こうなるのかというのが新鮮であった。リッセルベルグは、他にも、古典的な紳士の肖像を描いていたり、後期印象派的な夫人の肖像を描いていたりして、多才である。憶えておこう。
ギュスターヴ・モローの絵が5点あった。モローは、歴史に題材を取り、しかも退廃的な趣向が現われているので好きでない。しかし、「レダ」(写真)は良かった。眼に入った瞬間、おっいいじゃないかと思った。精緻に描かれた白い肌のレダ、荒々しい筆致で描かれた背景の岩々、その対照がレダの美しさと神秘性を引き立てている。後ろの天使の浮遊感もなかなかいい。絵は、直に見ないと、というのはある。写真で見れば、この絵は良いとは思わなかったかもしれない。いい絵は、時にびびっとくるということがある。これ以外のモローの絵は、気に入ることはなかった。
ユトリロの母でもあるシュザンヌ・ヴァラドンの絵が、何点かあった。「ユッテルの家族」、一癖も二癖もありそうな3人の女性が強い輪郭線で描かれていて、面白かった。あと、バルビゾン派のテオドール・ルソーが描いた「森のはずれ」という小品に、コローを思わせる美しさがあった。