オシムが語る「腐ったリンゴ」。

 イビツァ・オシムが、ハリルホジッチの解任について語った記事が出ていた。

「正直、ハリルホジッチと選手、そして日本サッカー協会との間で何があったのか、私は知らない。ただ、サッカー協会が一朝一夕にこの件を決断したわけではないだろうことはわかる。熟考の末の決断であったはずだ。

 チームがこのままでは機能しないと思われたときには、監督か選手を代えるしかない。しかし選手全員を取り代えることは困難だ。そんなときに一番手っ取り早いのは、腐ったリンゴを取り出すことだ。腐ったリンゴは放っておけば、周りのリンゴも腐りだす。監督は原因を作っている選手を特定し、速やかに排除しなければならない。だが、それもできないときは……監督を代えるしかない。

 チームをW杯にまで導いた監督を解任するのは、決して褒められたことではない。とにかく彼はひとつの目標を達成しているのだ。

 解任の理由は、選手たちが不満を持っていたからだけではない。

 選手とは往々にして監督に不満を持つものだ。特にキャリアの終わりに近いベテラン勢は、不満を多く抱えている。監督時代、私もこの点にかなり悩まされた。彼らはすでに名声を確立し、プライドも高い。引退に向けての花道を探しており、ベンチに座ることを受け入れられない。たぶん、ハリルジャパンでもまさにこの現象が起こっていたのだろう。

 ヴァヒドはとても頑固な人間だ。彼は誰かに相談をしたり、助言を求めたりはしない。そのツケを彼はこれまで何度も払わされてきた。ただ……私もまた、彼同様に頑固な人間だ。そして監督たる者、そうでなければならないと思う。

 しかしその場合、自分の信念を、自分のあり方を、きちんと説明することを怠ってはいけない。監督は自分の考えを明確に持ち、それをサッカー協会の人間にはっきりと伝えなければならない。そして、もしそれが受け入れられないようであれば、そのときは辞任するしかない。泣き言は言わず、堂々と去るべきだ。

西野朗新監督のもとで、日本代表はきっと落ち着いた空気を取り戻すことができるだろう。代表において一番重要なのは、チームが一致団結していることだ。不満を持つ選手たちを監督が納得させることができなければ、チームは簡単に崩壊してしまう。

 大切なのはチームのスピリットである。選手たちは仲がよく、監督をリスペクトして、その決定を受け入れる必要がある。代表監督の何よりも大切な仕事とは、チームに安定した環境を与えることだ。毎日顔を突き合わせるクラブチームの監督とは仕事の内容からして違う。

 もうひとつ、私が代表チームで大事だと思うのは、選手たちが皆それぞれのクラブチームでレギュラーとしてプレーしていることだ。シーズン中、ほぼ毎試合に出場していなければ、代表に入る資格はない。私も代表監督時代は”稼働中”の選手にこだわっていた。

 ロシアW杯では、正直、日本はかなり苦労すると思う。日本が入ったのは、”本命なき”ハードなグループだ。だからこそ、自信を持ってプレーすることがより重要となってくる。まずは守りを固くし、パワーとスピードで縦への攻撃のチャンスをうかがう。簡単なことではないが、不可能なことでもないはずだ。」

 ちょっと長すぎる引用かな。
オシム語録は好きだった。
ジェフの試合後のオシム監督のインタビューは、毎回面白く読んでいた。
あんなことは初めてだったな。
別に応援もしていないチームの監督の話なんだから。

 オシムのジェフとガンバの試合を何回か万博で見たことがある。
ジェフのメンツは当時無名の選手たち。
ガンバがやっつけるだろうと見ていたら、見事にジェフのDF陣にガンバの攻撃陣が抑えられた。
坂本とか、いい選手だなあと感心したものだ。
どういう風に抑え込んだのか、システム的なものには当時注目していなかったのでよくわからなかったが、摩訶不思議に抑え込んだという印象だった。 結構ポジションチェンジしていたんだと思う。

 さてオシムの思い出はいいとして、今回のオシムの「腐ったリンゴ」発言。 これは、物議を醸すだろうなあ。
この発言で真っ先に思い出したのは、ドイツWC後のジーコの「腐ったみかん」発言だ。
これを随分後になって、自分は知った。
その時、真っ先に思ったのは、小野伸二だった。 ネットでもそう言われてたみたいだね。
自分は、1999ナイジェリア・ワールドユースで準優勝した仲良しメンバーが小野を中心に徒党を組んで、中田英寿をチームで孤立させたと勝手に推測した。
真偽のほどは知らない。

今回のオシムの語る「腐ったリンゴ」は、本田圭佑と思わざろう得ないなあ。
やっぱりか、と言う感じだ。
本田は、選手でありながらクラブも運営するぐらいだから、政治力がある。
なまじっかそういう能力があるだけに、諦めずに動いたと推測されるだろう。
もっとも、オシムの発言はとても慎重で一般論として語っている。
上の引用が長くなったのも、オシムの発言がとても慎重で含みがあるから、結論の文章を抜け出すだけでは、伝わらないからだ。

 ハリルホジッチについては、擁護と指摘の両方があるな。
協会については、批判はしていない。
しかし、
「私が代表チームで大事だと思うのは、選手たちが皆それぞれのクラブチームでレギュラーとしてプレーしていることだ。」
「まずは守りを固くし、パワーとスピードで縦への攻撃のチャンスをうかがう。」
は、ハリルホジッチがやっていたことだな。 オシムも同じ考えということ。
ただ、「大切なのはチームのスピリットである。選手たちは仲がよく、監督をリスペクトして、その決定を受け入れる必要がある。代表監督の何よりも大切な仕事とは、チームに安定した環境を与えることだ。」
と。 ハリルはそれが出来なかったと。

 まあ、そういうことになってしまうな。
一部の選手や会長を納得させられなかった、ということ。
しかし、戦力として使えない本田を納得させる必要があったかな?
ハリホジッチのサッカーにおいてだが。
しかも、本田に何度もチャンスは与えていたし、外すかどうかは、決まっていなかった。
しかし、出れてもハリルのサッカーでは自分は活躍できないと悟ったんだろうな。

ま、自分なら本田とハリルのどちらを選ぶと聞かれれば、ハリルと答えるけど。
本田は、ブラジルWCでやり切ったはずだと思うから。 選手としてのピークでも、自分たちのサッカーをやって、ダメだったのだ。
あれは、本当に残念だった。 あれがあったから、ハリルがいる。
本田が出てもブラジルWCの時より良くなることはないだろう。
もっとも、本田を全否定するつもりは全くない。 大体、本田がリンゴとは限らないし。
本田は、将来、間違いなく日本のサッカーに大きな貢献をしてくれる人間だから。

最後に「私は暑さに耐えられないタイプ」というオシムは、この後、クロアチアの海沿いの町にある別荘でしばらく過ごした後、サラエボ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)の我が家でW杯を観戦するという。

オシムは、日本の暑さは大丈夫だったのかな?

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