羽生名人、永瀬六段に負け、広瀬八段に負ける。

 今週、羽生名人が竜王挑戦者決定戦準決勝で永瀬六段に負け、続いて王位戦第3局で広瀬八段に負けた。
印象的な負けが続いたので、書きたくなった。

 まず、竜王挑戦者決定戦準決勝の永瀬六段戦。
羽生ファンとしては、永世七冠のかかる竜王戦は、他の棋戦よりぜひとも勝ってほしいところ。
特に今は糸谷竜王なので、チャンス大だった。
しかし、若手の永瀬六段に負けてしまった。
おまけに、永瀬六段にはこれで3連敗。
珍しい。
まあ、羽生名人は、相手の将棋を把握してからが強いのだが。

 この将棋は棋譜を見たけど、相矢倉だけど、早囲いで力将棋っぽい。
それで、最後押し切られた。
何というか、力負けした印象なのだ。
永瀬六段は、受けがしっかりしているよう。
森内九段に似ているところがある。
だから負けるのかな。

残念な負け。
これで、永瀬六段と渡辺棋王の竜王挑戦者決定戦となった。
なんだか、渡辺棋王が竜王を奪還しそうな感じだ。
となれば、渡辺竜王から、羽生名人が竜王を奪還するのは、至難の業になりそう。

 続いて、王位戦第3局の広瀬八段戦。
広瀬八段には、9連勝中。
おまけに、前回の第2局の敗戦後、膝を抱えて、放心状態の写真を撮られて、精神的にやられてる感があり、もう勝負がついたと思っていた。
 第3局、序中盤で、羽生王位が優勢になる。
終盤、難しい局面で、安全策を取らず、勝負を決めに、詰ませにいった。
こういう所が、羽生将棋の面白い所。 スリル満点。
追いつめた感があったが、一手空いた所で、あきらめずに必死に粘っていた広瀬八段が、遊んでいた飛車を使っての連続王手で反撃。
29手詰めで、大逆転勝ちした。
最後は、終盤に強い広瀬八段の力が発揮された将棋となった。
広瀬八段の凄い読みと話題になったが、広瀬八段は、1分将棋になって、連続王手をかけている内に、詰みが見えたと、自分のブログで語っていたから、運もあったようだ。

 けど、流れが変わった、大昔の渡辺vs羽生の竜王戦第4局を少し思い出させる。
3連敗で打ちひしがれていた渡辺当時竜王が、第4局を打ち歩詰めで奇跡的に勝ち、以後4連勝で防衛。
その後も、大事な所で、羽生名人に勝つようになった。

 広瀬八段は、不思議な雰囲気を持っていると思う。
将棋世界9月号で広瀬八段の「ぼくはこうして強くなった」というコラムを読んだ。
その素直な語り口がとても好きだ。
奨励会仲間とあまり指さず、アマ強豪とばかり指していた奨励会時代。
それが、「振り穴」を得意とする棋士とさせた。
その「振り穴」で、王位を取った。
それをなぜタイトルを取れたかいまだにわかりません、と言い、まぐれだと言う。
謙遜して言っているのではない。
確かに文章を読むと、なぜタイトルを取れたのか、なぜA級にいるほどの強い棋士なのか、よくわからない。
自分の悪い所ばかり書いているから。
ただ、悲観しているのではなく、自分を厳しく客観的に見ていてのだろう。
それでいて、すかっとした風が流れている。
不思議な雰囲気がある。

 羽生名人について、こう語る。
振り穴に対する、羽生さんの対策は周到でした。
振り穴で劇的に勝った一局以降、自分の振り穴は、全くといっていいほど、羽生さんには通用しなくなりました。
 恥ずかしながら、自分は本当のプロの将棋を勉強するようになって、まだ2年ちょっとしか経っていません。・・・・・・
今度の王位戦は、今の自分がお手本にしている羽生さんへの挑戦です。
自分が本格的な居飛車党になって、羽生さんに教わる機会は初めてに近い。
教えてもらいながら、勝負ができる。・・・・・

 こんこと、言ってちゃあ、王位戦に勝てる訳がない、と強く思った。
しかし、この経歴でよくここまで強くなったなとも逆に思う。
何かしら、他の棋士と異なるものを感じる。
今度の王位戦はさすがにダメだろうが、数年後はわからない、そういう気にさせられた。

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