NHKスペシャル「藤井聡太。進化する14歳」を見た、面白し。

 NHKスペシャル「藤井聡太。進化する14歳」見た。
史上最年少棋士で、29連勝の連勝記録を打ち立てた藤井四段を密着取材、そしてその強さの秘密に迫った番組で面白かった。

 密着の部分で面白かったのは、藤井四段の初詣の様子。
おみくじが、大吉だったのには、笑った。 29連勝の予兆だったんだな、これが。
書かれていたことは、「わが好きなことをするべし」だと。 まるで作ったようなシーン。
何をお願いしたのと聞かれて、「将棋のことで神様にお願いしてもしょうがない。兄の(大学)合格を祈願しました。」
両方に感心した。 将棋に関しては、神頼みしないこと。 まっとうな考え方。
普通、兄の合格を祈願するか? それとも、それが普通?

 さて、将棋の強さの謎。
驚いたのは、相手の研究をあまりしないこと。
加藤ひふみ戦の前にも、詰将棋をやっていた。
それについて聞かれて、
「あんまり人の将棋を気にしてもしょうがない。
将棋っていうのは、自分の頭で考えて指さないといけないので、本当に強くなるには、自分の頭で考えるしかない。」
これには、衝撃を受けた。 本筋、ど真ん中の超正統派。
これを見たプロ棋士達は、ある意味驚いたんじゃないかな。
プロ棋士達もプロになる前の昔は同じ考えで指していたと思う。
しかし、勝つために対戦相手への作戦を練るのは、当たり前になる。
29連勝の過密日程中、いつ藤井四段は相手を研究しているんだろう、研究時間が足りないんじゃないか、と思っていた。 相手の将棋をあまり研究しないなら、問題ない。
それにしても、それで良く勝てるなと思う。
この前の中田功七段戦で、相手得意の四間飛車に穴熊で対するという戦いを避けなかった。
強くなるために、相手得意を避けない、それでも勝つ。
言わば、ハンデを背負いながら、勝っている。 凄いな。 羽生3冠でも、ここまでじゃない。
最も、上位と常時対戦するようになったら、少しは変わるんだろうとは思うが。

 藤井四段がAIを取り入れた話が盛んにされた。
藤井四段は、ある若手に勧められて、1年ほど前、コンピューターソフトを研究に取り入れるようになった。
それで強くなったと強調されていたが、どう取り入れたのかの話はなかった。
だから、漠然としていて、あまり関心しなかったな。

 一番面白かったのは、澤田真吾六段との対戦の話。
どう見ても、絶体絶命の場面から逆転勝ちした。

取り上げられていたのは、この場面。
先手藤井四段が▲7六桂と王手をかけた場面。
澤田玉が逃げれば、十手先で藤井負け、△同金なら十手先で藤井勝ち。 
藤井四段は、劣勢を悟っていたので、勝負手を放った。
勝つか負けるかの間違いやすい2択を迫ったのだ。
これについて、羽生3冠のコメント、かなり前の局面からあの局面を想定していたと思います。
杉本師匠のコメント、形勢が不利な時に指す、勝負手が彼の持ち味。
子供の頃から持っていた彼の才能。
AIには決して指せない手。 それは悪い手だから。 人間対人間だから指す手。

 凄いな。 かなり前から、罠を仕掛けた。
まさに、勝負師。 これは、面白いはずだよ。
あの少し垂れ目の顔からは、想像できない、一面。
負けず嫌いだけでなくて、勝負師。
杉本師匠は、藤井四段が強いのは、AIの御蔭と言われるのが、気に入らなかったみたいだな。
だから、勝負師の面を強調していた。
そうだと思う。
勿論、AIの御蔭で序中盤に強くなったが、年数を経れば強くなっていたのを、早めただけだと思う。
藤井四段の強さの本質は、やはり詰将棋で磨いた終盤力と勝負師の一面だと思うよ。

 そして、杉本師匠の「このような勝負手は、AIには決して指せない手」というコメントが、なぜ人間の将棋が面白いのかというのを物語ってくれたように思った。
棋士達の個性から来る人間ドラマも面白いが、人間心理に絡む勝負手というのが、人間の将棋を面白くしてくれているんだな、と思った。

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