「漂泊の画家 不染鉄」 ~普通かな~ *奈良県立美術館

 奈良県立美術館で、「漂泊の画家 不染鉄」を見てきた。

開館50周年を記念する本展では、初期から晩年までの代表作約120件を展示し、不染作品の魅力を改めて顕彰しようというものです、とのこと。

確かNHKの日曜美術館で見て、面白そうな画家だなと思ったことがあり、見に行こうと思った。
回顧展で多くの絵を見るのは、その画家の全貌が知れて、いいね。

★「廃船」

凄そうな絵だなと思っていたけど、そうでもなかった。
一時、社会党に入って、左にかぶれていたみたいだけど、根に会わなかったんだろうな。

★「秋声」
屏風の作品。 メインの家の前に大きな木を配した面白い構図。 背景の木を描かず、緑に塗ってるとことか、面白い。
技巧的な工夫をしていて、意外だなと思った。 心情をストレートに表現しようとする画家だと思っていたので。

★ 不染鉄「山海図絵(伊豆の追憶)」

この絵が一番良かった。
若い頃、伊豆大島で漁師のような生活を送った経験が生きている。
手前の海の色が緑がかって見えるけど、実物は深い碧である。
その水の下には、魚がたくさん描かれていて、それが面白い。 こんな風に目立たず描いた画家はいないんじゃないかなあ。
漁師をやった経験から、魚を描かずにはいられなかったんだろう。
雪山は一応富士山なんだろうけど、富士の向こうは、村の雪景色でその向こうも海を描いている。 だから実際の富士ではない。 富士の麓の漁村の景色を描いていて、生活感のある風景画を描いている。 そこがいいね。
絵としても美しい。

★「孤帆」「南海之図」は、水墨画だけど、筋目書きで波を描いているのが面白い。
筋目書きと言えば、伊藤若冲の菊の花とかで使われているのが有名だけど、波を描くのにはとても効果的に見えた。

★「落葉浄土」
大きな古い家と、隣に金色の大イチョウ、背景に黒々とした山、そして幾多の民家、そして仏像等々が描かれている。
夕景なのか、黒を基調としている。晩年の理想郷を描いた絵なのかも知れないが、良くはなかったな。

不染鉄の絵を多く見て、「山海図絵(伊豆の追憶)」に極まれり、という感じかな。
水墨画が多いのもあるが、全体的に暗い色調の絵が多い。 色の画家では、ないな。
生活苦等から生まれてくる深みも感じない。 そういう画家なのかなと思っていたんだけど。

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