伝馬遠 「風雨山水図」
静嘉堂文庫美術館で筆墨の美―水墨画展 第2部 山水・人物・花鳥展を見た(09/11/21)。
静嘉堂文庫美術館は、初めてである。二子玉川駅からバスに乗る。なんだか狭い道を進んでいき、寂しそうな所で降りた。少し歩いて、敷地内の林の中を歩いていく。大和文華館に似ている。金持ちの私邸が美術館になったタイプだ。内装は落ち着いていて、いい感じである。
国宝の伝馬遠「風雨山水図」、なぜ、これが国宝なのか?解説にも正直に馬遠の作ではなく、後の時代の作品だろうと書かれていた。勿論そこそこいいのだが。国宝1点、重文7点と豪華な作品が並んでいて、なかなかいいのだが、ぐっとはこない。その中で圧倒的に良かったのが、重文でもなんでもない「観音、蝦蟇、鉄拐図」だった。墨の迫力がある。岩や草木の太い力強い線、対照的に衣服の細いくっきりとした線、岩や草木は雰囲気を出すのに徹しており、人物を浮かび上がらせている。蝦蟇仙人のゆったりとした姿勢がすごく自然で、仙人らしい。鉄拐仙人の口から吐き出す魂が、小さく後ろ姿で表現されている感じもなかなかのものだ。唯一、観音があまり好きでない。といっても他でも観音が気に入ったことはないので、悪いということではない。この種の絵では、ベストだと思う。と勢いあまったところで、曾我蕭白の薄気味悪い絵を思い出した。曾我蕭白は、規格外なので比較してもしょうがないが、ネットで調べて見ると、顔輝の仙人図が出てきた。ベストとは言えないかもしれないが、そう負けてはいない。池大雅の「流泉古松図」、中国や室町の水墨画の中で、大雅の水墨画を見ると、その個性が明らかになる。明るくて、大らかで、解放感がある。いい。明時代の張の「山水図」、日本的で初め、玉堂かと思った。岩肌の淡い曲線がいい、岩峰を隠す雲もいい。伝 陳容の「雲竜図巻」、色々な龍の表情が描かれていて面白い。
まあ楽しめた展覧会であった。本展、東京国立博物館と日中の水墨画を見て、はたして日本の水墨画は、中国の水墨画と比べて、どうなのかという疑問が湧いてきた。中国にある超一流の水墨画を見たことないくせに言うのもなんだが、負けてないような気がするのだが。