南蛮美術の光と影 神戸市立博物館

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《泰西王侯騎馬図屏風》サントリー美術館蔵 《泰西王侯騎馬図屏風》神戸市立博物館蔵

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  四都図・世界図屏風

 神戸市立博物館で南蛮美術の光と影 展を見た(2012/05/14)。これがなかなか発見に満ちた面白い展覧会だった。まず二つの《南蛮屏風》、伝狩野山楽筆サントリー美術館蔵の方が良い。「IHS花鳥蒔絵螺鈿書見台」、これは工芸を越えた芸術品と呼べる超一級品、四隅の彫が陰影と奥行きを与え、螺鈿が実に美しい。「泰西王侯騎馬図屏風」、サントリー美術館蔵の方は、一曲一杯に騎士の騎馬姿が描かれていて、迫力がある。騎士の顔からは闘志が感じられるし、馬の顔からはもっと闘志が感じられる。一方、神戸市立博物館蔵の方は、騎士が刀を振るっていたりして、一見勇ましいが、サントリーのの方がずっと迫力が感じられて、いい作品である。西洋画法を採り入れて日本人が描いた絵画、「初期洋風画」は、少し稚拙さを感じざろうえないが、これはこれで、味わいがある。そして、一番驚いたのが、ローマのイエズス会に残る「初期洋風画」の3枚の殉教絵である。これが凄かった。稚拙なのだが、絵に力があった。「元和五年、長崎大殉教図(ジェズ教会)」、独特の渋い色合いが美しい。そして一番凄かったのが「元和八年、長崎大殉教図(ジェズ教会)」、中央で、キリシタン宣教師が火あぶりの刑に処されている。その前で、打ち首がさらされている。柵が取り囲み、銃の隊列と槍の隊列が、囲んでいる。手前を着物姿の女性達の列が歩いている。周りに大勢の見守る人たちがいる。ブリューゲル的美しさがある。群衆を描いていながら、色を巧みに配置して、美しさを醸し出す。傑作である。しかし、絵の稚拙さからいって、多分に幸運に恵まれたとも思うのだが、もしこの3枚の絵が同一の絵師の作品なら、相当なものである。アンリ・ルソ一的天才といえよう。「日本イエズス会士殉教図(ジェズ教会)」、3段の画面構成になっている。上段は、4天使のいる天空、中段は、磔のひあぶりの刑、下段は、首つりの刑、が描かれている。赤が印象的な、力のある絵である。これら殉教絵に感銘を受けて、図録を買おうと思ったのだが、図録では、残念ながらこれらの絵に命を感じることはできなかった。

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