「川端康成と東山魁夷」展   京都文化博物館  08/01/19

 京都文化博物館に「川端康成と東山魁夷」展を見に行った。今年初めての展覧会である。先週、神戸市立博物館の浮世絵名品展に行ったのだが、1時間待ちと言われて、我慢ならず見ずに帰ったので、今年初となった。川端康成と東山魁夷は、とても親交があったみたいで、それにちなんでということらしい。5年前にここでの「没後30年 川端康成 文豪が愛した美の世界」展を見たことがあるし、東山魁夷の回顧展も見たことがあるので、どうしようかと思ったが、まあ行こうと思った。京都文化博物館は、外観は赤レンガで古風なのだが、中は7階建ての近代的な造りである。金がかかっていそうで、大赤字じゃないのかなあ。
 さて、展覧会であるが、入っていきなり、浦上玉堂の国宝「凍雲篩雪図」である。イキナリはないだろう。徐々にテンションがあがってから見たいのに。イキナリ目玉の絵を見せて、お客の気を引こうという趣向で、最近の展覧会でよくみかけるのだが、悪い傾向だ。そのせいか、「凍雲篩雪図」があまり良く見えない。5年前には良く見えたし、岡山県立美術館での‘06の「浦上玉堂」の大回顧展でも素晴らしかったのに。次に、池大雅・与謝蕪村の国宝「十便十宜図」。文句なく素晴らしい。蕪村の宜秋がいい。この「十便十宜図」は、何回か見たのだが、まとめて見れないかなあ。帳面になっているので、ページをめくらないと次の絵を見れないので、どうしようもないのだが。さて、東山魁夷の絵である。山種美術館でも見た「年暮る」、美しい夜の雪景色である。現代の美しくもない京都の町並みを、屋根だけを描くことによって、青白く描くことによって、美しいものにしている。手前に川の堤防が見え、川べりに車が一台止まっているのもいいし、家の窓から、少し明かりが漏れているのもいい。蕪村の「夜色楼台図」を連想させる。当然意識しているのだろうが。この絵もいいのだが、隣の「北山初雪」が、圧倒的に美しい。山麓の真っ直ぐな北山杉に初雪が降りかかっている。雪の白の陰影と薄緑色の枝の緑の配色が美しい。川端康成の解説文が掲示されていて、地元の林業者に聞くと、こういう風景は、年に二三日しか見られないそうで、魁夷はこういう風景を通ってしっかりと見て、描いている、と。なるほど。東山魁夷は、写生の人である。京都の風物を描いた絵や「冬華」のような少し幻想的な絵もあったが、つまらない。魁夷の絵でいいと思うのは、自然の写生に徹した絵だった。勿論、自然をそのまま写しているのではなかろう。自然の美を純化していると思うが、写生の末の純化、それに成功した絵に美しさがあり、魁夷の個性が現われていると思う。他には、「青い沼」、「緑のハイデルベルク」、「秋深し」、「樹雨」が気に入った。富岡鉄斎の「蝦夷人図屏風」、金屏風の蝦夷の風俗を描いた絵で、水墨画の鉄斎としては、とても珍しい。一時偽者と疑われていたらしい。金屏風がはではでしくて、敬遠してしまうが、じっと見る。蝦夷の人達があまりうまく描けているとは思わない。しかし、構図に豪快さが現われているように思う。右隻に右奥から左手前に道があり、祭りで人々が手前に向かってくる。左隻はそれを受けて、手前に組み立て中の家があり、その向こうに大きく海が広がっている。なぜ、金屏風なんかに描いたのかなあ。金屏風だと、デザイン的に、装飾的にならざろうえないような気がするのだが。それにしても、川端康成は、いい絵を持っていたのだなあと感心する。国宝2点のみならず、いい絵やいい工芸品が多い。一作家がよく買えたものだ。
 写真は、東山魁夷の「北山初雪」。

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