「生誕100年 靉光展」  東京国立近代美術館 07/05/26

 靉光は、38歳で戦病死した画家である。靉光の名は、洲之内徹の「気まぐれ美術館」で知った。洲之内徹がえらく惚れ込んでいるので、見たい見たいと思っていたが、過去に数点見たことがあるだけで、まとめて見たことはなかった。生誕100年ということで、もう2度と見るチャンスはないであろうと思って見に来た。若い頃の絵は、大したことはなかった。良くなるのは、「ロウ画」からだ。《編み物をする女》と《鬼あざみ》が特に好きだ。次がライオン連作から《眼のある風景》の時期である。《眼のある風景》は、彼の代表作ということになっているが、どうだろう。岩の風景の中に異様に存在感のある眼があるのだが、意味はわからない。わからないから価値のある作品と捉えられているようだが、絵としての魅力がそんなにあるとは思えない。好きなのは、植物が生い茂り、その中に虫や鳥が見え隠れする濃密な幻想世界を描いた絵だ。《花(アネモネ)》や《蝶》が特に良かった。洲之内徹が持っていた《鳥》は、本の口絵で見て、すごく気に入っていたのだが、生で見ると、心動かされなかった。なぜだろう、残念だ。意外だったのは、昭和17年以降の絵があまりにつまらなかったことだ。どうしてこうなったのだろう。戦争の影響であろうか?靉光は、戦病死しなければ、戦後の日本を代表する画家になっていたかもしれないという幻想が自分の中で出来上がっていたが、そこまではいかないようだ。

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