NHKスペシャル「森の王者 ツキノワグマ~母と子の知られざる物語~」が1/15(日)に放映され、録画したのを見た。
森の王者ツキノワグマ、その生態を追ったドキュメンタリー。
日本中の森にいるので、その生態はよく知られていると思っていたら、警戒心が強く森の奥深くで暮らしているため、生態はほとんど知られていなかったそうだ。
動物カメラマン横田博(68)さんは、栃木県足尾山地で28年に渡りクマの撮影を行ってきた。
地元では、「熊仙人」と呼ばれているらしい。
まさに、その通りの風貌と人となりで、見ていて面白かった。
安蘇沢という熊銀座と呼ばれる谷がある。
垂直に近い断崖絶壁に熊がいるので、熊が丸見え、それを向かいの山から横田さんが、気付かれずにビデオカメラで撮影する。
この場所だからこそ撮影できた、そういう場所だった。
それにしても、クマがあんな崖をいともたやすく移動して暮らしているのに驚いた。
山でツキノワグマから逃れるのは、不可能だ。 木の上でも簡単に登っていた。
もっとも食べ物の90%は植物だそうだが。
さて、28年間の1000時間を超える映像は、とても興味深いものだった。
胸の白い月の輪文様がよだれかけみたいに垂れていたので、個体識別できたクマを「次郎(実はメス)」と名付けて、追いかけていた。
春、冬眠の巣穴から生まれてまもない子グマをつれて出てくる母グマの姿や、母グマが岩をどけて蟻を食べるのに夢中になって、そのどけた岩が落ちて、下にいた子グマにぶつかって、子グマが崖を転がり落ちていく場面などスリル満点ヒヤヒヤものだった。 子グマは自力で這い上がってきて、無事だったが。
そんな中で、衝撃を受けたのが、子殺しだった。
子グマを連れていた次郎が、ある時オスの熊に出会う。
オスが子グマに襲い掛かる。
次郎が必死に戦うが、体の大きなオスには敵わない。
殺されてしまう。
その後、どこかに行ったので、映像はなかったが、そのオスと次郎は交尾したようだ。
母グマは、子供を育てている間は、発情しない。
しかし、子供がいなくなると、発情する。
オス熊は、それを待って、交尾する。 交尾して自分のDNAを残すために、他のオスとの間の子グマを殺すのだ。
恐ろしい自然のメカニズム。
この“子殺し”がツキノワグマで確認されたのは、初めてだったそうだ。
翌年、次郎が冬眠の穴から出てきた。 子グマを2匹つれて。
やった~という感じ。 そして、微笑ましい映像が続く。
そして、またも衝撃を受ける。
翌年、次郎が、2匹の子グマを連れて歩いていると、また去年とは別のオスと出会う。
そして、また必死に戦うが二匹とも殺されてしまう。
疲労困憊でへたり込む次郎。
やがて、立ち上がると、どこかに去って行った。 そして、2度と次郎の姿は見られなくなった。
熊仙人が次郎を見つけるのが、俺の仕事だよと笑う。
2017年春、次郎の姿は見られるのだろうか?と番組は終わった。
2年連続でこんなことが起こるのか?
こんなんで、子孫が残せるのか?
衝撃的だった。
生物の残酷で不条理な世界。
熊仙人の味わいのあるおっさん顔とドローンで撮影された迫力の山の映像、素晴らしかった。
こういう番組を作れることだけで、NHKの存在価値は十分にある。