狩野山雪・山楽 京都国立博物館

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     狩野山楽《龍虎図屏風》

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   狩野山雪/山楽筆《朝顔図襖》

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      狩野山雪《盤谷図》

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    狩野山雪《雪汀水禽図屏風》

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    狩野山雪《雪汀水禽図屏風》

 京都国立博物館で狩野山楽・山雪展を見た(2013/03/30)。リヒテンシュタイン展を見るつも

りだったのだが、近くの駐車場がなぜか満車だったので、急遽こちらに変更。しかし、なかなか

に満足のいく展覧会だった。山雪がこんなに摩訶不思議な画家だったとは。
 山楽の《龍虎図屏風》の前で立ち止まる。虎が素晴らしい。龍が巻き起こす風になびく竹とそ

の龍を振り返り、咆哮する。迫力がある。美しさもある。じっと見ていると、おじさんが話しか

けてきた。この絵が戦前妙心寺にあった頃、写真に撮った原版を持っていると言う。眼の前の絵

は屏風仕立てだが、その写真では、板に貼り付けて撮ってあったそうだ。屏風仕立てではなく。

もしかしたら、襖絵だったかもしれない。これは興味深い。このおじさんの話が長くて、いつ切

り上げようかと思ったが、もしかしたらこの人が俺の今年の運勢を変えてくれるかもしれないと

、ふと思ったので、話に付き合うことにした。今年は、正月休みに京都のラーメン店の駐車場で

車のバンパーを削られて壊されるという、不運な年初めだった。それから、仕事ではろくなこと

が起こらない。このおじさんが流れを変えてくれないかなあ。
 狩野山雪/山楽筆の《朝顔図襖》、これが素晴らしい。実に現代的な感覚の絵なのである。3

段の高さの竹垣が印象的だ。竹垣といっても、細い薄茶な竹で編まれた竹垣で、その色の濃淡が

絵全体にアクセントを与えている。その竹垣に青い朝顔が美しい曲線を描いて、絡まっている。

そして竹垣の前に美しい花を添えている。素晴らしい。
 さて、次の間から山雪の実験的な絵の数々を見せられる。ひょうきんな顔の龍虎、異様に曲が

りくねった大木の枝、グロテスクな顔の仙人、解説でも書いてあったが、後の京都画壇の伊藤若

冲、曾我蕭白、長澤芦雪等の先駆けになっと思う。彼らはこの絵を見て、自分の感覚に従って、

どう描いても良いのだと思ったに違いない。《花卉流水図屏風》、上半分が流水文様が描かれ、

した半分が、小さく288区画の正方形に格子状に図鑑的に草花が描かれている。実に洒脱である

。才能と創意工夫が感じられる絵である。中国の故事を描いた絵だけは、正統な描き方でうまい

のだが、つまらない。そして山雪の集大成を最後の間で見ることができる。圧巻である。右手に

《龍虎図屏風》、龍に迫力がある。そして龍が巻き起こす波が、飛び跳ねる飛沫が素晴らしい。

虎には落ち着きがある。《寒山拾得図》も素晴らしい。グロテスクだが、頷けるグロテスクだ。

墨絵として、実に迫力がある。《盤谷図》も、波の数々な様態が面白いし、キテレツな岩山も感

覚的に受け入れられないが、面白い物がある。そして、《雪汀水禽図屏風》、山雪の集大成であ

ろう。異様さは、右隻の岩にとどめられているが、数々の創意工夫は散りばめられている。厚塗

りの胡粉と銀泥で描かれた波は実に繊細で美しい。雁行する無数の千鳥は、スローモーションを

見るようでもあり、鳥の飛び方の様を教えられているようでもある。そして美しい。洗練された

美しさのひとつの極致であろう。この画家は、実に幅広い絵を描いた素晴らしい画家である。今

回全貌を見て初めて知った。ただ、真に力強い絵は描いていない。

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