「この世界の片隅に (上)」  こうの史代

 「夕凪の街・桜の国」に惚れ込んで以来、彼女のマンガは色々と読んできたが、この作品を読んでいて、こうの史代がえらいことになってきたぞと感じた。自由自在になってきたのだ。木炭で描いても、鬼いちゃんという子供が描いたような絵を描いても、真上からこたつを囲む家族を描いても、浮世絵風にクローズアップの大根の向こうに物思いにふけるすずさんを描いても、巻物仕立てで楠公を描いても、何をやっても“ええなあ”と言わせるうまさが出てきたのだ。特に47ページのすずが水原さんの代わりに描く港の風景は絶品で、この人は本当に絵がうまいなあと思う。
 彼女は、日常の細々とした家事にとても思い入れがあるみたいで、一つ一つの家事を実に丁寧に描いていく。その家事や普通の日常の出来事で話が流れていく。そこにたわいないユーモアが散りばめられ、人の思いが込められていく。実に味わいがあるのだ。彼女は、杉浦日向子に次ぐ女流漫画家になるのかもしれない。

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