奈良の大和文華館に「富岡鉄斎と近代日本の中国趣味」を見に行った。
鉄斎の水墨画と彼に関わる中国の水墨画の展覧会。
大和文華館は、近鉄の社長が建てた、私立美術館で、池のほとりに立ち、周囲を林に囲まれた閑静な美術館。
実際の敷地より、広大な印象を与えるよう、うまく設計されていると思う。
入ってすぐ、松林の中の舗装された道を少し登っていく。
赤松が目を和ませてくれる。
林の中を少し登り、正面に美術館が見えてくる。
白さと格子模様が際立つ。
中は、大きなワンホールで、中央に竹のある中庭を配して、周囲の壁に絵を展示して、ぐるっと見て回る趣向ですね。
黄公望の「天池石壁図」、となりに鉄斎の模写が並べられている。
黄公望の画は、かなり黒ずんでいるのとガラスの光の反射でうまく鑑賞できない。
鉄斎の模写は、完璧だ。
中央に走る縦の稜線が、がっちりとした骨格を形成しているのが、よくわかる。
こういう骨格を感じさせられたのは、水墨画で初めて。
黄公望の画が、応挙等に激賞されてきたのもわかる。
汪葑の「渓山明微図」、右上から左下に広がって流れていく川が印象的。 道にも見える。
鉄斎の「寿老人図」、太く大胆な衣紋の線、コウモリが飛び交う、いかにも自由闊達な画で、鉄斎の面目躍如。
鉄斎の「寒月照梅華図」、薄墨の夜に浮かぶ白い月と白い桜。濃墨の幹が美しくくねっている。
右は対をなす「梅華満開夜図」
鉄斎の「古木図屏風」、あまりに豪快な古木と石。 よく見ると、金粉が振りかけてある。
桃山の豪快な障壁画を思わせる。
鉄斎の「魚藻図」、藻の中に二匹の鯉。 見ていて、楽しくなってくる画。 文人画の真骨頂。
仇英?の「仕女図鑑」、繊細な美しさと毒々しい青の奇岩が対照的。
陸治の「冬景山水図」、矩形線で描かれた岩と山。
細線のため、全体が白い雪景色となる。
そこにほんのりと赤い葉の木々が優しい。
ここで休憩コーナー。
ここから見える池と橋と春日山がうまい借景。
鉄斎の「山荘風雨図」、清冽な美しさ。
風雨の中、草庵で一人本を読んでいる。 風雨がまるで射し込む陽の光のようにも見える。
濃い墨のキレが、アクリルのような斬新な印象を与える。
鉄斎の近代性を感じさせる。