国立国際美術館で、ボイマンス美術館所蔵ブリューゲル「バベルの塔」展 16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて-を見てきた。
ヒエロニムス・ボスの油彩2点、ブリューゲルの「バベルの塔」を目玉に、16世紀ネーデルラント美術、約90点よりなる展覧会。
最初は、彫刻の展示。 そこまで良くない。
次は、宗教画。
★枝葉の刺繡の画家 「聖カタリナ」
女性の伏し目の表現が独得。
瞼の上の線を強調しているからかな。 少し哀愁を帯びるのに惹かれてしまう。
ハンス・メムリンクの絵でも見られた。
昔見た、皿の上に目玉を載せた女性像で、その印象が強烈に残っている。
そして、風景画。
★ヨアヒム・パティニール 「牧草を食べるロバのいる風景」
パティニールは、最初の風景画家と呼ばれているそうだ。
何とも味わい深い風景。
空が広く上半分を占めている。
水色と緑の山河が広がっている。 北方ルネッサンス独得の色だ。
そして近景に大きな木が描かれ、絵に奥行を出している。
彼の「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」よりずっといい。
そして、ヒエロニムス・ボスの絵画が2点。
★ヒエロニムス・ボス 「放浪者(行商人)」
薄汚い放浪者が旅の途中で立っている絵。
よくこんなモチーフで絵を描いたものだ。 それも宗教画全盛の当時。
後ろの建物は売春宿を表しているらしい。
だから、単なる写生画ではなくて、意味のある絵。 教訓とか諧謔とか。
それはそれとして、この灰色のトーンで統一された色合いが、良く見ると、美しいのだ。
だから魅入ってしまう。 ボスたる由縁。
★ヒエロニムス・ボス 「聖クリストフォロス」
この絵も不思議な絵だ。
風を孕んだ赤い衣が固まっている。 これはわざとだろうなあ。 どんな意味があるか知らないが。
この絵も赤い衣と青と緑の遠景の色の調和が美しくて、なかなかいい。
聖クリストフォロスの足元の水が、池みたいに見えるのが、なんだかな、という感じなんだが。
この後、ピーテル・ブリューゲル父の版画がずらりと並んでいた。
しかし、絵の前の柵が距離があって、版画の細かい所が見えない。
今回は、そういうこともあろうかと、単眼鏡を用意していた。
単眼鏡で見ると、細かい所まで良く見える。
何だか望遠鏡で覗いているみたいで、絵の中を覗いているような不思議な気分になった。
版画の前の柵は、見にくいんだから、近づけて欲しいね。
そして、待望のバベルの塔
★ピーテル・ブリューゲル父 「バベルの塔」
こちらは有名なウィーン美術史美術館のバベルの塔で、上の絵の2年前の作品。
こちらは、かなり建てかけの塔で、かつ一部崩れている。
聖書に忠実に失敗した感じを表現しているように思われる。
今作は、大分完成に近づいているように見える。
神の怒りをかったことよりも人間の偉業を表現したかったのか。
しかし、上部は赤茶けた不気味な色をしていて、これからの破壊を暗示しているようだ。
こちらの方が、より効果的と判断したのかな。
絵の美しさから言ったら、前作の方が美しいだろう。
これは圧倒的な絵だね。
ブリューゲルの絵には、珍しく美しいとは思わなかった。
それにしても、数少ないピーテル・ブリューゲル父の絵を日本で見れるとは。
去年の「ルーヴル美術館展」での「足なえたち」に続いて2作目。
眼福だね。
「イカロスの墜落」も見たかな。 真贋が怪しいらしいけど。