「俺たちの国芳 わたしの国貞」  ~神戸市立博物館~

 神戸市立博物館で、ボストン美術館所蔵「俺たちの国芳 わたしの国貞」―江戸浮世絵のツートップ、前代未聞の揃い踏み! を見てきた。

 ボストン美術館の浮世絵コレクションは質、量ともに世界有数を誇るものとなっています。
これらは近年までほとんど一般公開されることがなかったので、保存状態がよく、まるで摺りたてのような鮮やかさを保っています。
本展は、同館の14,000枚を超える国芳、国貞の浮世絵から厳選された名品をご紹介するもの、とのことです。

 さて、本展では珍しく写真撮影OKとなっていた(フラッシュは禁止)。
写真撮影OKは、自分の知る範囲では、奈良県立美術館が走りではないだろうか。
2014年の「アメリカ現代美術の巨匠達」~奈良県立美術館~で初めて体験した。
ブログを書く上で、写真を掲載してコメントを書けるのが、どれだけありがたいことか。
ということで、写真で紹介していこうと思う。

 国芳と国貞は、初代歌川豊国の弟子である。
国貞は美人画・役者絵、国芳は武者絵を得意とし、また奇抜な構図で世間を驚かし、異常なくらいの猫好きでもある、という知識が頭にあった。
まあ、早く言えば、国芳はちょっとゲテモノ的な浮世絵師と思っていた。
今まで、国芳の浮世絵はちょこちょこ見る機会があったのだが、俺は、今まで一体何を見ていたのであろう。
今回、国芳の凄さを改めて感じることになった。

国芳国貞 003 (640x480)
とても鮮やかな浮世絵が、来訪者を迎えてくれる。
国芳国貞 026 (640x480)
国芳国貞 027 (640x480)
国芳の武者絵。
とても鮮烈だが、ごてごてしている。
国芳国貞 028 (640x480)
国貞の役者絵。
きりっとしている。

 このあたりでは、やっぱり国貞の方が上だなと思って、見ていた。

国芳国貞 007 (640x480)
国芳。 この骸骨は見たことあるな。
同じようなのを、北斎も描いていたぞ。
ちなみに、国芳は北斎を訪ねたことがあるそうだ。
そして、国芳は広重と同い年。 彼らは同時代人だったのか。
お互いをどのように見ていたのか、とても興味深いね。

ちょっと国芳を羅列する。
国芳国貞 009 (640x480)
国芳国貞 029 (640x480)
国芳国貞 030 (640x480)
この絵は、テレ東の「美の巨人たち」で紹介されていた。
国芳国貞 031 (640x480)

 見事な3枚絵の数々。
奇抜な構想と構図。
しかし、それにとどまらず、絵として良くなってくる。
見ていて面白いし、美しくもある。
このあたりになってくると、「おや、国芳って凄いんじゃないか」と思い始めた。

国芳国貞 032 (640x480)
この国芳の幽霊画も真に迫っている。
国芳国貞 033 (640x480)
この千鳥波と帆の紅い桐文様の鮮やかさ。
国芳国貞 034 (640x480)
国芳国貞 035 (640x480)
障子の破れている文様。
国芳国貞 036 (640x480)
宇治川の合戦を、川の中から首を出している武者だけで描くという趣向の斬新さ。
国芳国貞 012 (640x480)
蹴散らされている侍たち。

 もう、国芳は乗りに乗っている。
国芳の着想は、溢れんばかりだし、それがまた見事に表現されている。
3枚絵は、国芳の独断場だ。

 次は役者絵。
国芳国貞 013 (480x640)
国貞の写楽が描いたかのような、特徴溢れる役者絵。

 そして、何と言っても、国芳のこれらの役者絵。
国芳国貞 014 (480x640)
国芳国貞 015 (480x640)
国芳国貞 016 (480x640)
天保の改革で役者絵が禁じられたため、落書き風にして役者絵を描いた。
この反骨精神と共に、その着想と見事な表現力。
これには惚れた。
そして昔見た、河鍋暁斎筆「新富座妖怪引幕」を思い出した。
x (448x148)
この絵には、大感動したが、河鍋暁斎が国芳に弟子入りしたことがあった、と今調べて知って、驚いている。
暁斎は、国芳の落書き風役者絵を見てたんだろうな。
けど、単なる模倣になることなく、自分らしさを出している。
それでも、その着想は、国芳だ。
「最後の浮世絵師」と呼ばれた月岡芳年も、国芳に弟子入りしたことがあるというから驚きだ。
皆、国芳に惚れこんだんだろうな。
国芳国貞 017 (640x480)
国芳国貞 018 (640x480)
これらは、細かな描き込みは無くなって、できるだけ単純に対象を捉えようとしている。
それが、また素晴らしい。
落書き風役者絵で、開眼したのだろうか?

 次は、美人画。
国芳国貞 021 (480x640)
国貞の一番良かった美人画。
国芳国貞 019 (480x640)
国芳国貞 020 (480x640)
一方、国芳の美人画。
国芳の美人画には、キレがあるんだなあ。
国貞得意の美人画においても、国芳の方が一段上だ。

国芳国貞 022 (480x640)
順路の途中にあった面白い趣向。
国芳国貞 023 (640x480)
国芳国貞 024 (640x480)
国芳は、美人画でも、3枚絵が素晴らしい。
国芳国貞 025 (640x480)
国貞。 べろ藍が美しい。

 とても、面白い展覧会だった。
超オススメである。
保存状態が良いというだけあって、色がとても美しい。
ボストン美術館に流れて残念ではあるが、一方しまいこまれて、美しいまま残されていた幸運にも感謝しなければなるまい。 浮世絵は、日本ではいい状態で残っていないような気がするのだ。
それが、浮世絵の魅力を半減させていると思っている。
まあ、それはそれとして、国芳の魅力を存分に味わえた。
自分の間違った先入観を正す良い機会となった。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
「関連コンテンツとスポンサーリンク」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする