チューリヒ美術館展   ~巨匠達の競演~

 神戸市立博物館に「チューリヒ美術館展」を見に行った。

 スイスが誇るチューリヒ美術館のコレクションを、日本で初めてまとめて紹介します。モネの大作やシャガールの代表作6点に加え、ホドラーやクレーといったスイスを代表する作家の珠玉の絵画、さらにはマティス、ピカソ、ミロといった20世紀美術の巨匠の作品など、これまでなかなか来日の実現しなかった印象派からシュルレアリスムにいたる34作家の作品74点を紹介します、とのことです。

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表の垂れ幕。

各々の絵について。
★セガンティーニ「淫蕩な女たちへの懲罰」
青い陰鬱な絵。 こんな説教たらしい絵を描いているなんて、知らなかった。

★モネ「睡蓮の池、夕暮れ」
縦2m、幅6mに及ぶ大作。 
モネ晩年の何を描いているのか定かではない、光を失った色が、光を出そうともがいている絵だ。
モネの絵の素晴らしさにいつも感動するだけに、これらの晩年の絵には戸惑う。
じっと眺めてみたが、感動はしなかった。
ただ、こういう絵が、現代絵画へと繫がっていったのだろうとは、推察する。
モネは、晩年眼を悪くする。
これら晩年の絵が、意図的だったのか、生理的なものだったのか、知りたいもんだ。

★ドガ「競馬」
見事にサラブレッドの馬体を描いている。
昔、パドックで馬をじっと見ていたから、わかる。
発達した前脚と後ろ脚の筋肉。 引き締まった胴体と首筋。
まぎれもないサラブレッドの馬体だ。
さすが、ドガ。

★ゴッホ「タチアオイ」
ゴッホにしては、珍しく暗い色使いの絵。
しかし、存在感がある。

★アンリ・ルソー「X氏の肖像」
ルソーの絵は、出来不出来が激しいが、これはいい作品。
真紅と黒の取り合わせが美しい。

★ピエール・ボナール「庭に憩う家族」
暗い色調のボナール。
それでも色は美しい。
でも、ボナールには地中海がよく似合う。

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★フェリックス・ヴァロットン「アルプス高地、氷河、冠雪の峰々」
ヴァロットンは、最近TVでよく取り上げられていた。
意味深な絵を描く画家だ。
今回そういう絵は、つまらなくて、この写真のような造形的なような絵になんだか惹かれた。

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★ムンク「冬の夜」
いい絵だ。 
暗い海の水色と黒々とした木々と雪の白さが織りなす美しさ。
こういう北欧の美しさを描かせたらムンクだ。
以前ムンク展で大量のムンクの絵を見た。
「叫び」があまりに有名なため、心理学的な絵ばかり描いていたと思ってしまうが、ムンクは実に絵がうまいのだ。

★ムンク「造船所」
タッチがやけに長い。 それが、独特な味を出している。

★マックス・ベックマン「マックス・レーガーの肖像」
まるで豚ゴリラだ。
ベックマンの辛辣さが出た絵。

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★マックス・ベックマン「スフェニンゲンの海岸の散歩」
マックス・ベックマンと言えば、以前「夜」を見たことがある。
拷問を描いた凄惨な絵だ。
上の豚ゴリラといい、批評的・思想的な絵というイメージだが、この絵は、絵として面白い。
馬車の人を思いっきり前にアップに描いて、その横に街灯を並べている。
その横には、海と埠頭、そして白い雲と青空。
その構図の妙が、眼を楽しませてくれる。
こういう絵も描くのか、という1枚。

★オスカー・ココシュカ「モンタナの風景」
神経質な病的さが表れた絵。
ウィーンの同時代の芸術家、エゴン・シーレと一見似ているが、こちらは全然ダメだ。
シーレにも病的さはあるが、力強さもある。
そこが違う。

★シャガール「パリの上で」
シャガールの絵は散々見てきて、似たような絵ばかりで、シャガールはもう見飽きたよ、という気分だったのだが、今回いい絵が多くて、やはりシャガールは美しいと思ってしまった。
少しパステルのマティエールを感じさせる。
黄色のヴァリエーションがとても美しい。

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★シャガール「窓から見えるブレア島」
窓から見た絵の中で一番美しいのではないか、と思ってしまった。
冷静に考えたらそうでもないかも、しれないが。
窓の青と外の緑がとても美しく感じさせる。
ぼかされた青が、幻想的でもある。

ホドラーはつい最近展覧会を見てきたばかりなので、当分もういい、という感じ。
ジャコメッティも昔多量に見たおかげで、お腹いっぱいだ。 まだ空かない。
シュルレアリスムの絵はイマイチだった。

さて、随分と個々の絵に触れてきたけど、それだけ様々な近代絵画の巨匠達のいい絵が多かったということ。
よくこれだけ揃っていると感心する。
オススメの展覧会。

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