神戸市立博物館 で 「ボストン美術館の至宝展」 を見てきた。
世界屈指の美の殿堂、ボストン美術館の主要なコレクションからえりすぐった、珠玉の80点を紹介する展覧会。 エジプト・中国・日本・フランス・米国の幅広い作品が展示されていた。その分、作品のテーマはなくて、作品を寄付した収集家に少し焦点を当てていた。
(エジプト)
特に目立つ作品はなし。
(中国)
南宋の馬遠と夏珪の絵があったが、薄黒くなっていて見にくくて、良し悪しがわかりにくい。
同じく南宋の周季常の五百羅漢図の内の二幅、奇想と巧さに感心する。
徽宗の《五色鸚鵡図巻》があったが、皇帝なのに凄く巧い。
そして、初めて見る陳容の《九龍図巻》。
こんな龍の図は初めて見た。
龍の九態を描いたものだが、岩間から現れて、波濤を乗り越えて、成長の末、休息の場に辿り着くという感じのストーリーがあって、面白かった。 そして龍に迫力があるし、渦巻く雲や波が如何にも龍と共にあるという雰囲気を出していて、日本の画家がこの粉本を見たことがあるかどうか定かでないが、名だたる画家達に影響を与えているのではないかと思った。
南宋というのは、水墨画の黄金期だなあ。
(日本)
英一蝶の大作《涅槃図》があったが、さして感銘は受けなかった。
素晴らしかったのは、曾我蕭白の「飲中八仙図」と「風仙図屏風」。
「飲中八仙図」は、薄墨での衣の描写が凄い。
登場人物は七人だが、もう一人は一幅に描かれた修行を辞めた釈迦。 蕭白らしい毒がある。
左下の垂れ目の男と右上の女は、蕭白の絵に良く出てくる。 俺には痴呆のように見えるんだけどなあ。
「風仙図屏風」
大胆な風の描写。 蕭白らしい自由奔放さが出ている。
2005年、京都国立博物館で「曾我蕭白 -無頼という愉悦-」という大回顧展を見て、蕭白の凄さに度肝を抜かれたことがある。
だから、今さら驚きはしないのだが、色無しの水墨画が蕭白には丁度いいね。
色が塗られていると、どきつすぎて、蕭白の毒に当てられてしまう。
(フランス)
印象派の絵の数々。
★ エドガー・ドガ 《腕を組んだバレエの踊り子》
以前にもどこかで見たことがある。
ゆるぎない精神性というものまで感じさせられるから、ドガは凄いね。
★ ポール・セザンヌ 《卓上の果物と水差し》
セザンヌは、とても好きな画家で、腐るほど見てきているけど、久し振りにじっと魅入ってしまった。
(アメリカ)
サージェントの子供の絵が良かったくらいで、残りはつまらなかった。
絵が多岐にわたっていて、何だか焦点がボケた展覧会だった。
龍の絵と蕭白の絵が、とても印象に残った。