未知の表現を求めて―「吉原治良の挑戦」を芦屋市立美術博物館で見てきた。
この美術館は初めて来た。
住宅街の中にあり、駐車場までの道が狭いのが少し難点。
本展のパネル。
なかなかいい感じ。
庭の石のオブジェがいいよ。
美術館の中が素晴らしい。
小規模美術館の中では、1番好きかもしれない。
ドーム状になっていて、中央が吹き抜けになっている。
白を基調として、明るい感じもいい。
階段を上ると取り囲む廊下の壁と部屋が展示場所になっている。
ソファも適所にあって、種類も色々、それぞれが座り心地がいいんだな、これが。
気に入った。
さて、吉原治良。
大阪新美術館の仮設美術館だったかで見た《縄をまとう男》を見て驚いたのが、吉原治良を知ったのがきっかけ。 その後も魚の絵を見て、この画家はいいなと思った。
個展で彼の絵を見るのは、今回が初めてだ。
★《芦屋川の見える静物》
窓枠に魚が盛られた皿と牛乳瓶が載っていて、外には芦屋川が見える。
両者が境目なく繋がっていて、違和感がない。
好きだな。これは。
★「水族館」
この頃、吉原は魚を市場で買ってきては、描いて、夜にそれを食べるということを繰り返していたそうだ。
この頃は、水色と茶色が美しく調和している。 そこが好きなのかな。
「水族館」という絵本もあったけど、これが少し幻想的で美しかった。
抒情的才能を感じたなあ。
この後、デ・キリコの影響を受けたようだ。
★《縄をまとう男》
何だ、これは、という初めて見たときのインパクトは残念ながら感じなかった。
それでも、見れる絵だ。
隣に「菊」という絵があって、縄と菊が描かれていて、インパクトがあるのだけど、そっちはイマイチしっくりこなかった。
★《手と朝顔》
手と朝顔をモチーフにしたシリーズで3枚あった。
どれもアイデア溢れる面白い構図だけど、それだけでなくて絵としてもいい。
そこが、この人は画家だなあと思わせてくれる。
この後、戦後は抽象絵画を描き出す。
自分の嫌いな世界だ。
しかし、彼の絵の具を塗りたくった絵の並んでいる前で、ソファに座ってぼんやり見ていても、嫌な感じはしなかった。 そこが吉原たる由縁か。
彼の円を描いた作品があった。 代表作らしい。
円を毎日描いていると、正直なかなか満足のいく円が描けないことに気付く、という彼の言葉があった。
画家は色々悟ることがあって、描いていて面白いんだろうけど、見る方はつまらないな。
微妙な線とか形の歪みとかあるんだろうけど、それがどうした?と思う。
確かにそこに円だけ描かれていると、精神性が立ち現れてくる。
しかし、そこに真の深みが出てくるためには、歴史とか伝説が必要に思われる。
芦屋市立美術博物館と大阪新美術館建設準備室の所蔵作品から厳選した約90点だそうだけど、もうちょっと作品を見たかったかな。