「与謝蕪村」展   MIHO MUSEUM  08/03/15

 「与謝蕪村」展を見にMIHO MUSEUMに行った。瀬田西ICから30分ほどで着く、信楽の山の上にある美術館で、こんな辺鄙なところに来るのは、よっぽど酔狂な奴だなあと思うが、この美術館には、03年の「生誕百年記念 小林秀雄 美を求める心」以来2度目である。小林秀雄は、学生時代に心酔していたので、本で知る彼の美術品を生で見たかったのだが、案外しょぼくて、さすがに美術館に展示するには、無理があった。
 さて、「蕪村」展であるが、01年にあった大阪市立美術館の「蕪村」展を見て以来、7年ぶりである。前回は展示替えで「夜色楼台図」を見逃していたし、重文の3横物と近年発見され本邦初公開の「山水図屏風」を見に来た。しかし、今回もだまされた。6回も展示替えがあり、「夜色楼台図」は見れたが、他の2横物は見れなかった。展示替えには注意した方がいい。
 最初は、どうということもない絵が続く。屏風がある大広間に来て、ぐっといい絵に出会う。「倣米南宮山水図屏風」、湿潤な山水図らしい山水図である。中央右に富士山のような美しい形の山がある。「武陵桃源図」、人物には感心しないが、背景の桃の木が美しい。国宝「十宜図」、丹精に描かれた美しさがあった。やはり他の絵とは違う。そして、「夜色楼台図」、えっ、こんなに小さいの、と少しがっかりした。広がりを感じさせる絵なので、もっと大きいのかと思っていた。このがっかり感が絵の粗を見させる。中央の白い山のぞんざいな形が気に喰わない。じっと見続けて、何とか取り戻そうとするのだが、良くならなかった。けれど、最後に全てを忘れさせる傑作が待っていた。本邦初公開の「山水図屏風」、銀地に描かれた、六曲一双の山水図、右隻の岩山の圧倒的迫力に引き込まれる。近づいて見ても良し、離れて見ても良し。素晴らしいの一言だ。近づくと、岩山のふもとに藁葺きの家々、描き込まれた木々から黒い太線の一刷毛で描かれた幹、点描に至るまで技術を駆使して草木が描かれている。写実ではなく、感性で捉えるように表現された自然、そういう所が水墨画の魅力だ。うーん、この絵の魅力を十分表現できないのがもどかしい。それにしても、この作品は、蕪村の最高傑作じゃないかなあ。しかし、蕪村らしいかといえば、そうではないと思う。蕪村らしさとは、洒脱、軽妙、自由闊達な精神性にあると思う。しかし、この作品には、堅固なものがある。安易なものはない。蕪村が人生の最後に文人画家の安易な所は排して、文人画家の精神の真髄を描こうとした渾身の作と感じた。禅僧としての雪舟の厳しい精神性とはまた異なり、鋭角的な線のない、丸みを帯びた線で岩が描かれていながら、真剣な迫真性を感じさせる絵である。
 写真は、「山水図屏風」の右隻の岩山。

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