「鑑真和上坐像」
「衆宝王菩薩立像」
「鑑真和上」展を見に奈良国立博物館に行った(09/05/16)。唐招提寺金堂平成大修理を記念してということで、唐招提寺の名宝が見られた。
入っていきなりに、梵天・帝釈天・四天王像が十分なスペースを取って、配置されている。こういう所が、奈良博は素晴らしい。どの像も、スリムで軽く立っているという印象である。重厚感に欠けるのが不満である。皆、袂をしばっているのが面白い。この中では、顔に圧倒的迫力がある多聞天がいい。南北朝時代の「五大尊像」、黒のバックに火炎が浮かぶ雰囲気のある絵である。鎌倉時代の「十六羅漢図」、傑作である。龍が描かれている1枚があるが、龍が空想ではないリアルさがある、というか少し生々しさを感じるのである。羅漢にしても、一癖も二癖もあるような羅漢が生々しく描かれていて、いい。「東征伝絵巻」は、絵がイマイチであった。
部屋を移ると、「鑑真和上坐像」である。正面から見ると、極めて平明で、リアルな印象を受ける。しかし、感動するほどでもない。横から見ると、太い首、伸びた背筋に厳しさを感じた。やはり、このリアルさは、ただものではないのかも。「薬師如来立像」、細い眼、ふっくらした顔、唐の顔である。日本人が作ったようには見えない。鑑真が連れてきた工人の作のようである。
「衆宝王菩薩立像」、これが凄かった。頭のてっぺんから爪先まで、一本筋が通っていると感じた。凄い気品である。一部の隙もない。が、そうかと言って辟易しない。引き締まった美、破調のない正調の美である。鑑真が連れてきた工人は、相当の腕のようである。残念ながら上の写真からは、この良さはわからない。どころか、全然ダメである。直に対面しないと実感できない美であるようだ。少し下から見上げると、丁度良いのかもしれない。