青春のロシア・アヴァンギャルド展   サントリーミュージアム  08/10/04

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ピロスマニの雌鹿」                ピロスマニの「宴にようこそ

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マレーヴィチの「農婦、スーパーナチュラリズム」    ウラディーミル・ドミトリーエフの「サーカス」

 青春のロシア・アヴァンギャルド展を見に天保山にあるサントリーミュージアムに行った。モスクワ市近代美術館所蔵品で構成され、1917年の革命をはさむ10数年間でロシアで展開されたロシア・アヴァンギャルドの作品を紹介した展覧会である。結論としては、まあまあだった。

第一のコーナー「ネオ・プリミティヴィズム」では、唯一ボリス・グリゴーリエフが少し良かった。娼婦を描いた絵と田園で寝転ぶ女を描いた絵が、見れる絵だった。

次に「ピロスマニ」のコーナー、居酒屋の壁に掛ける絵や看板を描いては、その日暮らしの金を稼いで放浪の人生を送ったグルジアの画家である。彼の絵は初めて見た。その素朴な絵は、アンリ・ルソーの絵に似ている。ルソーよりシンプルである。10点ほど作品があった。暗い背景に、人が一人立っている絵や、動物が一匹いる絵が多い。構図も色彩もシンプルであるが、惹かれる絵である。シンプルな場合、力強さが生まれるものであるが、それはない。静謐な絵である。技巧的には、暗い背景に、白を効果的に使っているのが印象的である。一番良かったのは、雌鹿(写真)である。雌鹿が一匹、頭をかがめて、水を飲んでいる。右斜め下へと流れる体と首のラインが美しい。暗い背景に、茶色い体、そして体が白く縁取られているために、少し神々しささえ感じられる。心捉える絵である。隣に「小熊を連れた母白熊」があった。パンフのこの絵に惹かれたのだが、実物は良くなかった。足が変に長いし、突っ立っている。バランスも悪い。「ひよこを連れた雄鶏と雌鳥」は、ピロスマニを感じなかった。サインもなかったし、偽者ではないのかなあ。ピロスマニに対する結論は、シンプルないい絵を描いているのだが、思ったより深みがないというものだった。しかし、展覧会場の外で見たピロスマニの画集では、深みがかなりありそうな絵もあったので、早計な結論は出さない方が良い。いつか彼の絵をもっと見たいものだ。

カジミール・マレーヴィチ」のコーナー、ロシア・アヴァンギャルドの第一人者と言えるだろう。「収穫」、初期の作品で、まだ写実が残っているが、なかなかいい。「冬のモチィーフ」、キュビズムだが、訳がわからない美しくもない絵ではなく、絵としての良さが残っているキュビズムである。色の縁取りも面白い。そして、「農婦、スーパーナチュラリズム」(写真)、非常に斬新な絵である。丘の連なりの前に、農婦?がどかんと突っ立っている。丘が、縦の色面のラインで描かれ、絵に流動感を与えている。美しくもない色の配色なのだが、それがかえって現代的な印象を与える。白と黒に塗り分けられ、シンプルな形で人が構成されている。デザイン的であるが、やはり絵であろう。斬新でいいとしか言いようがない。しかし、これが農婦とはいかがなものか?絵では、非人間的なものになっている。農婦の本質を描いたというより、絵としての形と色の構成を追求した作品だと思う。その後、マレーヴィチはさらに抽象的になっていくが、それはつまらない。

1920年代以降の作品」のコーナー、ウラディーミル・ドミトリーエフの「サーカス」(写真)、素晴らしい幻想である。さすが、メイエルホリドの元で、舞台芸術を担当しただけのことはある。絵はサーカスというよりメリーゴーランドに見える。青白いバレリーナを中心に、木馬に乗った青年と騎士が回っている。斜め下にピエロの顔が浮かんでいる。後ろに電信柱がある。絵は斜めに描かれている。まさに幻想的。素晴らしいイマジネーションである。スターリンの圧政によって、現代絵画が否定された時代のマレーヴィチの絵があった。普通の絵だったが、妻の肖像は普通に良かった。

 

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