日本のノーベル賞受賞物理学者「南部陽一郎」さんが亡くなられた。
まあ、日本人ノーベル賞受賞者も多くなって、その中の一人ぐらいの認識だったけど、NHKの「神の数式」という番組を見て、この人が世界的にとんでもない人であることを知った。
授業で習う、ニュートン、アインシュタイン、シュレディンガー、マックスウェルの超一級物理学者にはかなわないけど、その次または次の次のクラスの人達に入るのではないかと思う。
湯川さんや朝永さんより凄いんじゃないかな。
「神の数式」は、すべての物理現象をたった一つの数式で表現したいと願った物理学者達の苦闘の歴史とその中身をできるだけわかりやすく紹介してくれる、とんでもなく優れた番組である。
2013年9月に放送されたようだけれど、再放送を何となく面白そうだと録画してたのだが、面倒くさくなって、ほおっておいたのを、最近初めて見た。 夢中になって見た。
すべての物理現象は、美しい数式で表さなければならないという考えのもと、デュラックという物理学者が、数式に対称性を持ちこみ、そのことを発端に、4種類の素粒子の性質と素粒子に働く3つの力を数式で表現することに成功する。
ところが、その式によれば、すべての物質の重さがゼロになるという大問題が発生した。
この大問題を解決したのが、南部さんの「自発的対称性の破れ」という理論である。
「対称性」という概念により成功してきた素粒子物理学に、「対称性は破れる」という革命的な考え方を導入して、重さを説明するのに成功する。
クォークとその反粒子のペアが生まれては結合して消えている。それには、右巻きと左巻きのペアがある。
ところが、「自発的対称性の破れ」により、右巻きの粒子と左巻きの反粒子のペアが結びついて、消えずに残り、空間中に沈殿しているというのである。
その空間に粒子が光の速さで飛んでくると、粒子は空間中に沈殿している右巻きの粒子と左巻きの反粒子のペアとぶつかり入れ替わりながら、進んでいく。
その動きにくさが、重さだと言うのである。
真空中は、何もないのではなく、粒子と反粒子のペアで埋め尽くされているというのである。
これは、革命的すぎる考え方である。
質量と真空の概念を変えたのである。
これは、超弩級の発見だ。
だいたい、現在こんな考え方になってるとは、この番組を見るまで知らなかった。
その後、物理学は、上記の素粒子の数式と重力を説明するアインシュタインの一般相対性理論の式を統合させる方向に進む。
そこでも数式に無数に無限大が現れるという問題が発生した。
それは、式の分母に距離rが存在するからで、粒子がぶつかると、距離rがゼロになるからだ。
粒子を点で表現しているからだ、ということがわかった。
そこで、粒子は点ではなく、輪ゴムのようなひもだという「超弦理論」を導入すると、数式から無限大が消えた。
そして、どうやら「超弦理論」(正確にいうと「超弦理論」を発展させた「M理論」)が、今「神の数式」にもっとも近いようだ。
あと、この世界は10次元以上だそうですよ。
この「超弦理論」の大本となった、素粒子は「ひも」の性質を持つという考え方を提唱したのが、南部さん。
この「ひも」の話は聞いたことはあったけど、それを考えたのが日本人とは知らなかった。
これも革命的な考え方。
二つも革命的な考え方を思いついたとなったら、本物の天才。
合掌。
メディアは、如何に凄い人であったかということを、ちゃんと伝えないと。
国民栄誉賞もんだと思うけどなあ。
「神の数式」についてに記事はこちら。