ドイツ経済が好調なのは、ユーロのおかげ。

 ドイツのマックスプランク社会科学研究所の所長のヴォルフガング・シュトレークという人が、日本の雑誌のインタビューに答えていたんだけど、その中身が「その通り」という内容だったので、書いておこうと思う。

 「ドイツは東西ドイツ統一後90年代の経済の停滞を、シュレーダー首相の行った社会保障改革「アゲンダ2010」という痛みを伴う改革で、乗り切ったと言われているが、それは過大評価で、ドイツ経済が今好調なのは、共通通貨ユーロがあるためだ。
ユーロは、ドイツにとって、二つの利点がある。
一つは、ドイツはユーロによって圏内の市場にアクセスできる。
同時にアメリカ・日本・中国に対して、通貨価値を低く保てる。
ドイツは歴史的に工業国で、輸出にたよっている。
ドイツは輸出で反映する。 経済優位はユーロで保たれている。」

 「もし、フランスやイタリアでアゲンダ2010と同様な改革をしたとしても、経済への影響はさほどないはずだ。
これらの国にとって、ユーロの価値は高すぎる。
また、ドイツに比べインフレ率が高すぎ、それを緩和することができていない。
それによって競争力が失われている。
フランスはユーロ導入まで債務拡大を裏付けとした経済成長によって追いつくことを常としていた。
しかしそれが出来るのは、自国に中央銀行があった時までで、現在は欧州中央銀行(ECB)がその役割を担っている。
そして、ECBはフランスから独立していて、ドイツ主導で動いている。」

 前々から、ドイツはユーロだから大きく儲けていると思っていたけど、ドイツ人の学者もそう言っているんだねえ。
ただ、フランスでさえユーロの価値は高すぎると考えているのには、驚いた。
となるとフランスも南欧諸国ほどではないにしても、負け組だな。

 勝ち組なのは、ドイツとオランダ・ベルギーくらいか。
ちなみにデンマーク、 スウェーデン、イギリス、 ブルガリア、 チェコ、 ハンガリー、ポーランド、 ルーマニア、クロアチアの9か国は、欧州連合に加盟しているけど、ユーロを導入していない。
とても賢明な国々。

 シュトレーク氏は、さらにこんなことまで言っている。
「ドイツはEUの一部であって、もはや一国で成り立っているのではない。
EUの中のドイツは、日本の東京に相当するようなもので、経済活動の中心になっている。
このため、イタリアやスペインでは失業者が多いが、ドイツに富を吸い取られている。
イタリア、スペイン、ギリシャ、ポルトガルはユーロ圏に参加するべきではなかった。」

 ドイツ人がドイツが他国の富を吸い取っているとあからさまに言うとは、流石だねえ。
EUの中のドイツが、日本の東京に相当するなら、ドイツは地方のギリシャを援助しないとダメだろうなあ。
ギリシャは、本来経済が不調になれば、為替安になり、それで輸出が伸びるなり、観光収入が増えるなりしていたはず。
あそこまで酷くなるのは、ユーロのせいだからねえ。
けど、ドイツ人が怠け者と考えているギリシャを援助することは、ないだろうなあ。

 シュトレーク氏の未来予測が気になる所だけど、悲観的だ。
「EU内の格差を是正するには、もう遅すぎる。
ユーロはやがて大きな問題となって跳ね返ってくる。 しかし、どういう形でかは、わからない。」
 「世界的な債務の増大は大問題。
特にアメリカの個人債務は、中国のGDPより大きくなっている。
債務が増え続けるとどうなるか、誰もわからない。
歴史的にこれほど、債務が増えたことがないからだ。 運を天に任せるしかない。」

そして、最後にこう語っている。
「確かなのは現実が重大な危機に直面しているということだ。
戦後、私の母はスデーデン地方(今のチェコ)を追われ、私は難民キャンプで生まれた。
第二次大戦で5000万人もの死者が出たが、私は何とか元気でやってきている。
このことから言えることは、何が起きても世界がそう簡単に終わることはないだろう、ということだ。」

 ははは、少し不謹慎だが、これには笑った。
一般人には、これほど悲観的な予測はないよ。
難民キャンプで生まれてたら、ブラックマンデーみたいなことが起こっても、達観していれるだろうなあ。

 この人の書いた著書がドイツで大いに話題になったそうだから、ドイツ人も今の繁栄は自分らの努力のおかげと思っている所に少し水を差されただろうなあ。

 それにしても、冷静な分析と何やら悲観的な将来予測に、ある種感銘を受けたので、ここに書いておこう。

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