平安古経展   ~奈良国立博物館~

 平安古経展を見に奈良国立博物館に行った。
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 平安時代の様々な写経を紹介する展覧会。
素紙に墨で書く通常の写経から、料紙を色で染める、金銀の截箔を散らす、絵具で描画する、文字に金銀泥を使うなどの方法で装飾されたもの、そして銅板経や瓦経が登場するのは平安時代であり、さらに文字を「刷る」方法が始まったのも平安時代とのこと。
 平安時代は、一番写経の盛んな時代だったのかもしれない。
その様々な写経が展示されていた。

★国宝 金光明最勝王経宝塔曼荼羅 第六塔
9重の塔を文字を連ねて描いている。
そして、そのことを感じさせない美しさ。
2chの文字絵の先駆だね。

★国宝 金銀字一切経 中尊寺経
金泥と銀泥で交互に一行ずつ書いてある。
それが、とても美しい。 美意識の極致だね。
金泥だけ、銀泥だけの写経より遥かに美しい。
見返し絵はイマイチだけど。

★国宝 法華経 序品 竹生島経
紙に下絵が描かれるようになった。
蝶、鳳凰、草花など。
しかし、まだ美しいと言えるレベルには行ってないかな。

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★国宝 一字蓮台法華経
蓮の花に一文字一文字を書くという、凝りよう。
しかも、花は5色で色分けされていて、さらに花弁にも単弁と複弁がある。
特に複弁の花は美しかった。
この一文字一文字を大切にしようという敬虔な心持ち、そしてどんな物でも美しくしてしまう美意識、日本人の心の在り様が、伺える写経。

★重文 法華経 観世音菩薩普門品
久能寺経とベストを争う素晴らしい一品。
見返し絵は、絵具がふんだんに使われているからか、一番かな。
紙は、5種類の色の紙を継ぎ合わせていて、その色彩感覚が抜群に素晴らしい。
字も細い所と太い所があり、色紙にマッチしている。
渋いけど、日本人の研ぎ澄まされた美的感覚が感じられる、素晴らしい一品。

★法華経(一品経) 久能寺経
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・薬草喩品第五
見返し絵がいいね。
見返し絵に力を入れてるということは、写経というより、美術品的意味合いが強くなっているということかな。  

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・従地涌出品第十五
見返し絵の美しさは特筆もの。
本紙の天地に金銀粉と細長の切り子を散ばし、緑の蓮を描いている。
装飾的美しさの極致。

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・随喜功徳品第十八
後期展示で、見れず。
見返しに幽玄な味わいがある。

 平安時代の様々な写経を見てきて、「久能寺経」を見ると、平安時代の様々な写経の製作技術の粋を尽くした、集大成的な作品であると思った。
「法華経 観世音菩薩普門品」も、華やかさでどうしても負けるが、渋い気品ある美しさがある。
「久能寺経」は、は鳥羽上皇周辺の人々の結縁により成ったらしい。
そして、この後、鳥羽上皇の第四皇子・後白河天皇が絵巻物の時代を作る。
雰囲気は変わるが、巻物の伝統というのを思ってしまう。
そして、大分後に、本阿弥光悦と俵屋宗達の合作、「鶴図下絵和歌巻」等の作品群につながっていくと感じた。
これら平安の写経の最高到達点が、本阿弥光悦と俵屋宗達の合作「鶴図下絵和歌巻」等の作品群だと思う。
あと、平家納経も忘れたらダメだね。

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