奈良国立博物館で、国宝 醍醐寺のすべて ―密教のほとけと聖教― を見た。
京都中心街の東南に位置する密教寺院、醍醐寺。
その歴史を伝える古文書・聖教69378点が国宝に指定されたことを記念し、平安時代から近世に至る醍醐寺の歴史と美術をたどる特別展、ということです。
暑い日だった。
市役所の駐車場から博物館に向かって歩いていると、外国人の観光客が目に入ってくる。
中国人が多い。
さて、広々とした館内が気持ち良い。
二つの「如意輪観音坐像」が、素晴らしい。
右のは、眠るような穏やかな顔が、いい。
左のは、片頬をついた女性のような顔もいいが、どっしりとした蓮、その下のうねった木による台座もいい。 そして、何より透かし細工の後背が、何とも言えず繊細な作りで、優品である。
「両界曼荼羅図(金剛界)」、茶系統の色柄が美しい。 クレーの絵のようだ。
図の意味することは、わからないが、絵としても美しく、描かれている。
さて、本展白眉の「五大明王像」、残念ながら全像平安時代のままが残っているわけではない。 作り直されている。
左から「大威徳明王像」、これは唯一平安時代作。
ジャワやインドネシアの部族仮面を思わせる、原初的な迫力のある顔。
これは、珍しい。 こういう仏像は記憶にない。
もし、他の4体も創作当時の平安のまま残っていたなら、異様な印象を与える五大明王像になっていたと思う。
来歴が知りたいところだ。
「軍荼利明王像」、これは江戸期。
江戸期にも拘らず、迫力ある不気味な顔である。 腕を胸前で交差する姿も決まっている。
こう写真で見ると、5体の腕のポーズは、それぞれかっこいいというか、決まっている。
右の3体も、左2体ほどではないが、個性的で迫力がある。
いろいろと展示が続くのだが、古文書が多く、それには興味がない。
最後の最後に傑作、俵屋宗達の「舞楽図」が展示されている。
これは、何とも、象徴的というか、凄い構図の作品、のような気がする。
気がするだけで、実感として凄いとは、言えない。
自分には、この絵の凄さは、まだ捉えきれないようだ。