「カラヴァッジョ展」 ~物足りない~ *あべのハルカス美術館

 あべのハルカス美術館で、「カラヴァッジョ展」を見てきた。

 カラヴァッジョの日本初出品を含む作品約10点(帰属作品含む)に、同時代の画家や追随者らの作品を加えた計約40点による展覧会。

カラヴァッジョと言えば、祭壇画なので、あまり期待はしていなかった。
2001年の「カラヴァッジョ 光と影の巨匠―バロック絵画の先駆者たち」を見たことがあって、イマイチだったからなあ。
作品数が少ないのが、欠点。

★「悲嘆にくれるマグダラのマリア」
大作の一部の習作。
顔を伏せて、悲嘆に暮れている女性の絵。 さすがに、うまい。 味わいがあるというか。
高い写実性。

★《法悦のマグダラのマリア》
これが、悔い改めて、法悦に浸る人の顔だろうか? 疑問だな。
聖なる物というより、邪悪な物を感じるんだけど。
組み合わせた左手の先から腕にかけて、黒ずんでいる。 何か悪い物を暗示しているとように感じるんだけど。
画面の左上がかすかに暗い緋色に輝いているんだけど、暗すぎる。
どう見ても、聖なるものを描いたとは思えないんだけどなあ。

★「聖アガピトゥスの殉教」

白いシャツの白く輝いている所が、現代的な印象を与える。 凄くシックでもある。
この絵が本展で一番好きな絵。 実物はこれよりもっと良く見える。
首の周りの赤い紐みたいなのを、変わったファッションだな、貴族がしていた襞襟みたいなものかと思ったら、解説を読んだら、血しぶきと書かれていて、笑った。

★「洗礼者聖ヨハネ」
これは、昔見たことがある。
調べたら、2009年の「ボルゲーゼ美術館展」で見ていた。
「圧倒的リアリズムである。一人の小汚い羊飼いの少年が描かれており、聖人らしさはない。しかし、ただ小汚いだけではなく、圧倒的存在感がある。俺は、想像で人は描かない。生身の人間を描くのだという強烈な主張が感じられる。傑作である。」と当時感想を書いていた。
今回の感想は、おっさん顔の小汚い少年が描かれている、だ。 
圧倒的存在感なんて感じなかったし、傑作なんかじゃないな。 聖人を小汚く描いたリアリズムに感動して、そういう美辞麗句を書いたのかな?
ただ、初見の方が、真実を見ていることがよくあるので、何とも言えない。

カラヴァッジョは、喧嘩にあけくれた質の悪い男である。
《法悦のマグダラのマリア》と「洗礼者聖ヨハネ」は、上辺は聖なる物を描いた絵と思わせながら、俗な物を描いて、貴族たちを鼻で笑っているような気がしてならないのだが。

予想通り物足りない展覧会だった。
絵の点数が少ないからね。
それでも、革命の画家カラヴァッジョの絵を見れる機会は、滅多にないから、見に来る価値はあると思う。

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