ルーヴル美術館展   ~京都市美術館~  

 京都市美術館でルーヴル美術館展 日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄 を見て来た。
 本展では多様性にみちたヨーロッパの風俗画の展開を、古代エジプトとギリシャの作例を起点に、16世紀初頭から19世紀半ばまでの絵画約80点によってたどる。
17世紀オランダ絵画を代表するフェルメールの円熟期の傑作、《天文学者》は、日本初公開となる。
とのこと。

ルーヴル美術館展 001 (640x480)
フェルメールの《天文学者》やムリーリョの「蚤をとる少年」が目玉みたいだけど、とんでもない。
あのピーター・ブリューゲルの名作「足なえたち」が来てるのだ。
ムリーリョの「蚤をとる少年」の横に目をやって、「足なえたち」を見つけた時の驚き。
日本でピーター・ブリューゲルを見れるなんて。
門外不出と思っていたのに。
ブリューゲルの画を多数有するウィーン美術史美術館の展覧会は、何度も開催されているが、ベラスケスの画は来ても、ブリューゲルの画は決してこない。
それぐらい、価値が高いのだ。
自分は、世界最高の画家だと思っている。

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★ピーター・ブリューゲル 「足なえたち」
 ムリーリョの「蚤をとる少年」を見て、イマイチだなと思って、右に目をやると、この絵に気付いた。
小さい絵なのだが、オーラが違う。
芝生の落ち着いた緑色の美しさ。
何とも心地のよい色なのだ。
ブリューゲルの緑。
そして、茶色や赤や白とのバランスの良さ。
 構図も素晴らしい。
ブリューゲルの絵は、多くの人や物を描き込んでも、物の全体の調和が取れていて、かつ色の調和も取れている、という奇跡が起きている。
多くの物が描き込まれていても、うざくないのだ。
そこがブリューゲルの一番凄い所だと思っている。

 この絵は、美しいというより、凄いという感じかな。
この小さな絵には、美しさや真実がぎゅっと閉じ込められていて、それがこちらに放散されてくるように感じる。
 勿論、この絵には風刺が込められている。
ブリューゲルが偉大な画家と呼ばれる一つの理由でもある。
それを考えるのもいいけど、自分が見たいものを見つけるだけだろうな。
この至福の時をずっと味わいたくて、しばらく立って、この絵を見続けていた。

 さて、展覧会の絵について。
最初、古代の絵やギリシャの陶器が並んでいるが、それは、軽く飛ばす。
最初に目に付いたのは、
★ル・ナン兄弟の「農民の食事」。
貧しい農民の服の渋い色合い。 グラスの中のワインの透明感。
冴えない表情の人ばかり描かれているのに、神々しささえ感じられてくる不思議。
じっとこちらを見つめる子供の瞳だけが、純粋か。

★クエンティン・マセイス 「両替商とその妻」
深みがあって、精緻な美しさを持つ絵。
見れば見るほど、深みが出てくる。

★マルタン・ドロリング 「台所の情景」
雑多な部屋の情景。
リアリズムだが、透明感がある。

★ムリーリョの「物乞いの少年(蚤をとる少年)」
この絵には、がっかりした。
画像で見ると、よさげに見えるんだけど。
この絵は、思ったより大きな絵である。
見上げてると、この少年は、この大画面に耐えることができないと感じた。
それが、イマイチと感じた原因である。

★ルーカス・ファン・レイデン 「トランプ占いの女」
色が多すぎて、不協和を感じるのだが、ギリギリでイヤに至らず、それが不思議な魅力を醸し出している。

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★フェルメール 《天文学者》
フェルメールの作品は、ここ何年かで、とても多く来ている。
70%くらい見た気分なのだが。この絵は初来日みたいだ。
静謐な味わい。
やわらかい光が部屋に充満している。
自分の見た中でも、一級品だと感じる。
けど、いろいろ見て来たので、そこまでの感動はない。

★ティツィアーノ 「鏡の前の女」
確かに女性の肌のきめ細やかさとか服の質感とかいいのだが、ティツィアーノのいい絵は、こんなものじゃないからねえ。
絵全体として、イマイチだった。

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★コロー 「身づくろいをする若い娘」
これが、本展で、ブリューゲルに次いで、気に入った作品。
コローの風景画は大好きだが、人物画でいいのは見たことがなかった。
この絵を見た時、誰の絵かな、と思った。
自分は、作者やタイトルを見ないで、まず絵を見ることにしている。
ちょっとマネっぽいが、タッチが粗くない。
誰だろう、あきらめて作者を見ると、コロー。
驚いた。 確かにこのシックさは、コローか。
 野性的な少女が粗末なシャツとスカートを穿いている。
薄汚れたシャツの白さとスカートの灰青色と茶灰色のバックが、渋~い味わいを作り出している。
シャツとスカートは、少ない筆致で描かれていて、それがマネを思わせた。
一転、焦点となるおさげの髪の毛は、緻密にリアリズムで描かれている。
モデルは薄汚れていて、野性的な少女なのだが、絵自体はシックの極みなのだ。
とてもいい絵。
見とれてしまった。
コローにこんな人物画が書けるなんて。

 さすが、ルーブル。
全体的にレベルの高い絵が多かった。
ブリューゲルの画も見れるので、絶対オススメ。
もう見れるチャンスは来ないんじゃないかな。
「イカロスの墜落のある風景」が来たことあるけど、それは後世の模写の可能性が高いと判明してから、来日した。
模写でも、凄く良かったけどね。

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