バルテュス展を京都市美術館で見た。
画像では色々見ているが、生では数点見たことがあるだけで、初めての個展である。
ロリコン趣味の、特異な絵を描く画家というイメージで、ピカソが「20世紀最後の画家」と言ったのが、ピンとこなかった。
生で多くの作品を見ると、さすがに絵に力があって、絵を堪能できた。
そうして、バルテュスは、「物語の画家」であると、強く思った。
最初に、画家が8才から11才の間に描いた、「ミツ-バルテュスによる40枚の絵」を見た。 子猫ミツとの出合いから突然の別れまでを描いた、版画風な連作である。 とても、子供が描いたとは、思われない、画面構成の優れた作品である。
ここに彼の天賦の才能が発揮されていたことに後で気付くことになる。
しばらく、大したことない絵が続く。
そして、「嵐が丘」の挿し絵があった。
俄然、絵に生気が出てくる。 ヒースクリフとキャシーのエキセントリックな恋愛と感情が、エキセントリックな表情とポーズで描かれている。
そして、この挿し絵が、「キャシーの化粧」に結実する。
一目見て、その迫力に惹きつけられた。 一発触発の緊張感が、この絵にある。
ここからは、バルテュス独特の絵の世界になる。
《-美しい日々-》、少女の少しふしだらな姿、そして暖炉に薪をくべる男の後ろ姿、どうしても良くない想像をしてしまう。
物語を連作ではなく、一枚の絵に込めることに成功する。
こうして、バルテュスは、「物語の画家」となった。
描写力も凄い。 暖炉の火の描写なんて。
「眠り込んだ若い女」、何とも心地よい色調の絵である。
そして、こういう一見写実的な絵にも、物語が隠されている。
こんな小品にも、物語がない絵は、描かない。
なぜ、揃いも揃って、こういう性悪な顔になるのかは、謎だ。
東京滞在時の画帳が、ビデオ展示されていた。
案内をしてくれた後の節子夫人が描かれている。
最初は、椅子に座った姿とかなのだが、ページが進むにつれ、段々ヌードになってくる。 こやって、くどいたのか。
バルテュスの風景は、イマイチだなと感じていたのだが、最後の方は、渋い味わいが出てる絵になっていた。
そして、この写真の左手に見える、「モンテ・カルヴッェロの風景 2」
これは、別格。 複雑な構成の凄い絵だ。
3時間近く、見てた。
久しぶりに、絵を見るのに没頭した。
いい絵描きなのは、間違いない。
本人は、誤解がある、と言っているが、やっぱり少女への思いは、清純なものとは言えないないと思う。
多分に不純なものが含まれている。
それが真実なら、しょうがないじゃないか。
それを隠すと本物の絵にならない。
これが、バルテュス。