京都国立博物館で 時宗二祖上人七百年御遠忌記念「国宝 一遍聖絵と時宗の名宝」を見てきた。
踊り念仏で知られる時宗は、宗祖一遍(1239~89)が鎌倉時代に開いた宗派。
一遍は念仏をとなえることで誰もが往生をとげられると説き、全国を行脚(遊行)して、念仏札を配り(賦算)、布教につとめた。
本展では、全国各地を遍歴した一遍の生涯を描いた国宝「一遍聖絵」(清浄光寺(遊行寺)蔵)を12巻全巻を公開とのこと。
1章 浄土教から時宗へ
口から唱えた南無阿弥陀仏が6体の仏に変わる有名な「空也上人立像」があったので、驚いたが、よくよく見ると、教科書で見た有名なのとは違う。 あれは、六波羅蜜寺にある運慶の四男康勝の作みたいだ。
当麻曼荼羅図がとても美しかった。
当麻寺の根本曼荼羅を縮小模写した絵らしいが、それでも美しい。 原本はどれだけ美しいことか。
2章 時宗の教え 一遍から真教へ
一遍上人の歌があった。
「とにかくに 心はまようものなれば 南無阿弥陀仏ぞ 西へゆく道」
いい歌だなと思った。
調べたら、一遍は、西行が訪れた歌枕の地を自らも訪ね、その地で同様に歌を詠んでいる。
江戸時代に編集された『一遍上人語録』には、約七十首の和歌が記録されている、とのこと。
他にも、
「となふれば 仏もわれも なかりけり 南無阿弥陀仏の 声ばかりして」
という歌があった。 いいね。 率直でいて、美しい。
3章 国宝 一遍聖絵の世界
日本各地を遊行し、多くの人々に救済を施した一遍。その生涯を全12巻に及ぶ長大な絵巻として表した作品が、国宝『一遍聖絵』である。一遍十回忌にあたる正安元年(1299)に完成したとみられ、六条道場歓喜光寺の開山であり、一遍の近親・高弟とされる聖戒が詞書を撰述し、謎の絵師・円伊によって描かれた。
多くの中世絵巻を見てきた。
『源氏物語絵巻』・『信貴山縁起』・『伴大納言絵巻』・『鳥獣人物戯画』が、日本の四大絵巻物と呼ばれている。
それらに比べれば、二段落ちぐらいだけど、遊行した日本各地を描いた風景に味がある。 素晴らしいとまでは言えないけど、少し寂れた田舎の風景に味がある。
それに、前後期別なのは残念だが、全巻公開だから、絵巻物本来の魅力、ストーリーを絵で辿るのを味わえた。
ただ、もっと顔を近づけて見れないのが残念。 単眼鏡で覗いて見たよ。
この庭の細々な描写なんていいねえ。 人物が小さすぎて、顔の表情とか良く見えないのが残念。
踊念仏は、小屋の中でドラを鳴らしながら、ぐるぐる回っていたんだとわかる場面。
そして周囲に大勢の観衆。
何か、熱狂しかないようで、およそ悟りとは程遠いような。
4章 歴代上人と遊行 時宗の広まり
「真教上人座像」 蓮台寺
真教上人の顔の左が少しゆがんでいる。 とてもリアルで、真実の力がある。
これぞ、鎌倉時代の彫刻という感じだ。
鎌倉時代は、初めての武士政権、そして新仏教の勃興の時代だ。 そこから写生の力強い彫刻達が生まれた。
どうつながっているのか?
「阿弥陀および観音・勢至菩薩立像」 行快作
両脇の中腰の観音・勢至菩薩が、リアルかつ艶めかしく、素晴らしかった。
快慶の弟子だそうだが。