巻第一の須弥山の夢
奈良国立博物館で特別展 天竺へ~三蔵法師3万キロの旅を見た(2011/8/20)。国宝 玄奘三蔵絵巻を全巻見られるというのが、珍しくて。ただ、前後期展示なので、見られたのは、半分だったが。まず、巻第一の須弥山の夢の場面、海の緑色の波が、非常に印象的である。結論を言ってしまうと、この波がこの絵巻でベストであった。素晴らしい。他の場面の波も良かった。波だけ、別の画家が描いたのでは思いたくなるほどだ。他に面白かったのは、床や壁の装飾模様が変わっているということである。ある場面では、床が亀の繰り返し文様になっていて、それがいいというわけではないが、面白い。玄奘が赤い馬に乗る場面は、うまいと思わせるものがあった。この絵巻の全体的な印象を言うと、可も不可もなし、という感じである。頭の中に、三大絵巻の練達の技の記憶があるので、それらに比べれば、生き生きとしていない、動きが感じられないよいう所であろうか。鎌倉時代の絵巻なので、絵巻の頂点である平安時代に比べれば、落ちるのは否めないのかも。
他には、快慶の深沙大将立像の憤怒の表情と立ち姿が素晴らしく、やはり鎌倉時代は、彫像の時代だな、と改めて思った。
奈良国立博物館に来ると、見終わった後、東大寺あたりを散歩する。鹿を見ながら、ほっこりとした気分になる。そして、南大門の金剛力士像を見上げる。ちょっと黒くなりすぎなのでは、なかろうか。一度、大掃除をすべきだと思うだが。