あべのハルカス美術館に「フィラデルフィア美術館浮世絵名品展」を見に行った。
所蔵する4,000点以上の浮世絵のコレクションから厳選した春信、写楽、歌麿、北斎など150点の珠玉の作品を展示します、とのこと。
浮世絵もそんなに好きでもないのだが、最近よく見てる気がする。
海外の美術館の浮世絵は、保存状態が良くて、色が綺麗なのが多いから、ちょっと見ようかなという気にさせられる。
この美術館にも結構来てるような気がする。
今回は、調べてチケットショップで券を購入することにした。
あべのハルカスの丁度南に面した道路に、「チケットスーパーあべのHOOP前店」があったので、ここで購入。
値段は、前売りと同じだった。
時代順に浮世絵が展示されていた。
第二章は、「錦絵の誕生 春信の浮世絵革命」。
春信はちょくちょく見てるけど、これほどまとめて見るのは、初めて。
★鈴木春信 「花魁道中」
とてもくっきりとした線で描いている。
やわらか。
これくらい綺麗な保存状態だと、美しさがはっきり伝わる。
春信の色は、やさしいんだな。
★鈴木春信 「水売り」
水売りが天秤を担いでいるだけの絵。
こんな売れそうにもない絵を描いたということが、春信の凄さかも知れない。
美人画、役者絵というような売れる絵だけでなく、戯れる母子像等、当時の日常を描いているのである。
恐らく、当時の市井の風俗を描くパイオニアだったと思う。
これには、印象派も驚いたかも知れない。
印象派が当時のパリの風俗を描くきっかけになったかも知れない。
春信の、錦絵の創始者にとどまらない凄い所。
絵師、彫師、摺り師の名前が書かれている浮世絵もあったし、そこに芸術家という自己認識の萌芽みたいなのを感じるのだが。
それに判じ絵みたいな事もしているし、とても知的な人なんじゃないか、という印象を今回持った。
★鈴木春信 「やつし芦葉達磨」
紅い着物を着た美女が芦の葉に乗って川を渡っている絵。
紅い着物の黒い輪郭線を排していて、異様に薄紅色の美しさが際立っている。
この色の美しさには見とれたが、絵としては、その美しさが生かされていない。
★鈴木春信 「五常 智」
姉が妹に習字を教えている絵。
この絵が今回の春信のベストかな。
ピンク、えんじ、もえぎ、赤系統の色とりどりの美しさ、やさしい色合い。
好きだなあ。
★鈴木春信 「三十六歌仙 在原業平朝臣」
本当は、「五常 智」の絵ハガキを載せたかったんだけど、なかったので。
まあ、こういう感じ。
★鈴木春信 「笛を吹く若衆」
きりっとした細い線。
夜空のぼかし。 素晴らしい摺り。
★鈴木春信 「お波お初」
えんじの着物。 白の千束が映えて美しい。
★勝川春章 「二代目市川八百蔵の曽我十郎」
役者絵。 一見着物の線の多さに辟易しかけるが、じっと見ると良い。
★勝川春英 「初代浅尾為十郎の寺岡平右衛門、五代目市川団十郎の大星由良之助」
役者のわざとらしい雰囲気が良く出てる。
★鳥居清長「吉原の花見」
八頭身美人群像。 あでやかの一言。
★初代喜多川歌麿 「歌撰恋之部 稀ニ逢恋」
匂い立つような美しさ。
薄紅の背景が、美しさを際立たせている。
★初代喜多川歌麿 「娘日時計 午の刻」
薄黄色の背景と紅い着物の対比が美しい。
★礫川亭永理 「越前屋内 和国」
歌麿似。 帯と着物の柄が美しい。
★東洲斎写楽の役者大首絵9点
こうやって見ると、皆、華のないすっとぼけた顔をしている。
役者が嫌がったはずだ。
「三代目沢村宗十郎」は、なかなか斬新なデザインの扇子を持っている。
「四世松本幸四郎の山谷の肴屋五郎兵衛」演技がうまそうな顔をしている。
★葛飾北斎 「富嶽三十六景 甲州三島越」
藍が主体で、きりっとした美しさ。
とにかく、浮世絵の保存状態が良くて、色がとても美しかった。
浮世絵が店頭に並んでいた時は、思ってる以上に美しかったかも知れない。
あと、春信のやさしい色合いの美しさ、市井の風俗を描くパイオニアだったこと、構図の素晴らしさに感じられる知性等、春信の凄さを感じることができる展覧会だった。