「前田寛治のパリ」展 大阪市立近代美術館(仮称) 心斎橋展示室室  08/06/28

 大阪市立近代美術館の「前田寛治のパリ」展を見た。前田寛治の絵は、今までに何点か見たことがあり、良くは知らないが、いい絵を描くなあと思っていた。本展は、作品数は少なかったが、いい絵がまあまああった。パリに行く前は、泥臭い絵を描いていたが、パリに行ってからは、垢抜けた。けれども、暗い色調を基本としているのは、変わらない。
パリにいたのは、わずか2年半であるが、精力的に描いていたのが感じ取れたし、帰国後もわずか5年後の33歳で亡くなっているが、いい絵を残していた。
 まず、「ポーランド人の姉妹」がいい。全然かわいくない姉妹だが、人体と建物の縦の直線がやけに強調されており、それを背後のやしの木の葉が柔らかく受け止めている。独特の魅力のある個性的ないい絵だ。「二人の労働者」、左寄りの友人の影響を受けていた時期に描いた絵で、如何にも労働者という感じが良く出ているが、全体の渋い色合いがいい。「ブルターニュの女」、ずんぐりむっくりの美しくもない女性が座っているのだが、黒と白のチェックのワンピースが目に付く。黒の上着と黒の背景が、ワンピースを浮き立たせているおり、この絵が知的に構成されているような気がする。前田は、西洋絵画を熱心に研究していたようなので、須田国太郎と似た構図と配色を考え抜く知的な画家なのかも知れない。
 大体が、裸婦とかでも、女性が全然美人でない。しかし絵として良いのは、腕があるということだろう。「棟梁の家族」、これは、何年か前の独立協会展でも見たが、今回も良かった。着物の赤と背景の青が少しどぎついが、全体としては、素晴らしい。「籠の静物」、素晴らしい静物画である。絶筆の「海」もかなりいい。ほのかな光が満ち溢れてくる感じが何ともいえず、いい。
 前田寛治の絵は、派手さはない。色も美しくないし、主張もない。しかし、絵としていい。はずれがないような気がする。どの絵も絵だなあ、と思う。いい画家だなあ、と思う。こういうのを絵心があると言うのかも知れない。
 写真は、前田寛治の「棟梁の家族」。

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